愛情の裏返し(後編)-9
・
「……これ、俺のなんだからもっと大事にしてよ…」
「……」
「俺だけが必死になっても晶さんがその調子じゃ守れないよ?」
「……うん」
「晶さんに何かあったら俺どうすんの?」
「どうなるの?」
「……」
「おかしくなる?」
「……晶さんのパンツ被って外走り回る…」
「……ぶっ…それってアレじゃん!…変態ナントカってやつ!」
「笑う前にそうならないように努力してよ晶さんっ!?そんななったら週刊誌に載っちゃうよ? 藤沢 聖夜── 夜な夜な奇行に走るって!」
「走り出す前に職質受けるよたぶん…パンツ被った時点で通報されるから」
考えただけで笑いが吹き出す。
あたしの頭にはパンツを被って連行される夏希ちゃんがしっかりと浮かび上がっていた。
「晶さんのせいで積み上げた俺の20年間がパアになる…」
「うん、ならないように気を付けるから」
「俺のために守ってよ自分を…」
「うん」
あたしは抱き締めてくれていた夏希ちゃんを抱き締め返す。
・
こんなにユーモラスでかっこよくて一途に好きだって言ってくれる人──
もう他には現れない…
かも?
「だいすき…」
間には何も入れないってくらいに抱き締め合う。
「離れたら俺ストーカーになるからね…」
「うん」
「地球中捜し回るよ?」
「うん」
「そのくらいの金あるからね?」
「ふふ…」
「なに笑ってんの?」
「なんでもない」
なんでもない…
ただ、
夏希ちゃんの束縛が心地好かっただけ──
つむじやおでこに夏希ちゃんの柔らかな唇が押し充てられてこそばゆい…
二人の関係はまだまだ始まったばかり。
二人の出逢い
運命という偶然が呼び寄せたこの愛。
永遠の未知へと揺れる標(しるべ)がその先を指し示めしていた──