キャスティング-6
この容貌──
どこかでみたことある…
「舞花は和食でいいんだな?」
……舞花?
そう念を押す楠木さんに頷く女性──
ああ…
思い出した──
週刊誌の“濃厚ちゅう”の相手じゃん……
あれ、なに?
一緒に居るのって不味いんじゃないの?
それでマスコミから逃げ回ってたんじゃなかったっけ?
そこんとこ業界的にどーよ?
………
ああ、
事務所では公認の仲──
だったっけ……。
これ見よがしに連れて来ちゃうのかよ?……
ってもちろん夏希ちゃんが連れてきた訳じゃないのは承知してる。
ただ…
やっぱり恋人として気分いいもんじゃないよね?
しかもこの寄り添い方……
「じゃあ和らぎセットの和食、三つ」
「はい…」
笑顔もなしに注文を受けたあたしを楠木さんはふと、疑問顔で見上げていた。
芸能人、お立ち寄りの店になっちゃったな……
衝立に遮られたテーブル席は何処と無く華やかだ。
やっぱり一般人とは何かが違う──
注文を口にしながら厨房に入ると和らぎの和食膳の器を並べ、時間外れの食事メニューをマスターが用意するまであたしはカウンターで待機した。
・
─────
「聖夜、どうした?」
「べつに」
下を向いて携帯を取り出した俺に社長が声を掛けてきた。
「出演人の顔は覚えてきたか?」
「ああ、覚えたよ。虎太郎がしっかり挨拶してた、アイツはさすがだ」
テキトーにそうかわす。
社長、今、俺それどろじゃないから…
話し掛けてくる社長を鬱陶しく思いながら俺は手にした携帯のメール欄を開いた。
今朝、愛してるって送ったばかりだ──
その送信欄からまた俺はメールを送っていた。
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何そのスカートの短さっ!?
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夏希ちゃんに関係ない
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──…っ…
返ってきたメールにムッとくる。
なんだよ関係ないって…
関係あるだろっ
恋人なんだからっ──
普段見たこともない服装。
正直、家での部屋着はそのスカートよりももっと短いショーパンだ。
ケツぎりぎりのヤツだ。
オマケに着古して糸もほつれているような色気疑うようなヤツ──
ヨレヨレのキャミにノーブラ隠しのシャツを羽織ってフローリングで胡座かく。
でも、そのだらしなさが堪らなく興奮させてくれる。
・
晶さんの脚は妙に綺麗で艶かしい──
ただ、細くて長い人形のような、モデルのような脚ではなくて…
すごく立体的で
綺麗と言うよりもすごく色っぽい
めちゃめちゃイヤらしい脚をしている。
それこそ強いセックスアピールを男に感じさせる脚だ…
あのラインの色気は男にしかわからない──
その脚を無防備にもさらけ出し、ミニスカートで闊歩されれば恋人の俺が黙ってられる筈がない
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お店のユニフォームだから
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電話を握り悶々とする俺にそんな単調なメールが追加で返ってきていた。
なんで喫茶店でそんな服着せるんだよっ
明らかに晶さんを見せ物にしてるとしか思えない。
店のマスターにも少し怒りが込み上げる。
3時を前にしてお茶の時間を向かえ喫茶店には客がちらほら入り始めていた。
俺の大好きな晶さんの生脚が店の中を動き回る。
正直悔しい…
そして、デニムのスカート姿はめちゃかわいい…
家でももちろんそんな姿したことないし、はっきり言って家の方が露出は激しい……
ただ、中途半端に布を纏うってめちゃくちゃイヤらしいわけで──