愛の天秤-3
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夏希ちゃんの額があたしの肩に押し充てられる。
小さく微かに聞こえてくる声…
「もういいよ…切って…」
掠れた声でそう言った……
「……、あ…多恵ちゃんごめん、ちょっと着信入ったから切るね…また今度掛けるから」
「あ、そう?じゃ、またね!そっちの土産要らないから手ぶらで帰ってきなよ?あんた貧乏なんだからっ」
「はは、うんわかった、またね」
明るい多恵ちゃんの声が途切れた──
できればずっと電話掛けていたかった…
静かになった上にこの気まずい空気──
後ろから抱き締める夏希ちゃんの喉が何度もゴクリとなっているのがわかる。
たぶん苛ついてるんだろうな──
何か言いたいのを我慢してんだろうな──
だから聞かずに切ればよかったんだよ…
嫌いになって別れた相手じゃなかったから…
だけど元彼は大学に入ってすぐに新しい彼女が出来たと聞いた──
あたしと言えば引きずったのは1年くらい……
ただ、バイトに追われ…
失恋を癒すためにちょこちょこ通った喫茶店のコーヒーに惚れて……
いつの間にかこんなコーヒー淹れられたらいいな…
なんて夢ができて──
元彼のことを忘れて今に至るわけで。。。
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相変わらず腰に回った夏希ちゃんの腕がぎゅっと繰り返し抱き締めてくる。
「同窓会…行くの?…」
「………」
「行くなって言う権利…俺にはないよね?…」
「……」
「はあっ…晶さんっ…なんかすごいムカムカするんですけどっ!?…」
「………だから、聞かなきゃよかったじゃん…」
「気になるじゃんっ!最初の一言でっ…あれ聞いたらもう気になるに決まってるじゃんっ…」
「……同窓会は行っても行かなくても実家にはどの道帰るし…皆近い、から顔も合わせるし…」
夏希ちゃんはぎゅっと強く抱き締めてくる
「……っ…復活ってことは、高槻って元彼?…」
「うん、でも四年も前のだよ…」
「四年…っ…」
腰に巻き付く夏希ちゃんの腕に力が入った。
「俺が最初に晶さん抱いた時、四年振りだって言ったよね?そいつ以外に彼氏居なかったんだっ?」
「………う、ん。こっち上京して忙しかったし…」
「……っ…」
「もう忘れてたし…」
「そいつは忘れてないじゃんっ!…」
「そだね…はは、……」