艷男-3
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「軽い恋愛じゃない。まあ若い内はどうしてもヤれてラッキーくらいの感情になるのは否めんがな…若いなりに真剣な恋は必要だ」
「………」
「俺が経験して欲しかった恋愛てのは、嫉妬や怒り、泣くほどの思いとか切ないとか、口では言い表せない感情を心で感じる恋愛をし…」
「……してるよ──」
「………」
「充分に、してる……」
それこそ今…
逢いたくて苦しくて
たまに気持ちが一方通行で…
好きって気持ちがほんとに伝わってるのか未だに不安で──
かと思えば突然、好きだなんて言葉を沢山囁いてくれる…
あの人のことを考えただけで苦しくて切なくて
笑顔を思い出しただけで幸せになる…
独り占めにしたくても俺の言うこと一切聴いてくれなくて好き放題言ってやって翻弄して──
呆れるどころか益々夢中になっていく……
思い出しただけで想いが溢れる…──
「……っ…──」
やべ… めちゃめちゃ逢いたくてなってきたっ──
俺を見て目の前でニヤつくおっさんがなんか鬱陶しい…
「なんだ、んな面して仔猫ちゃんのことでも思い出したか?」
「なにが仔猫?虎だよあれは──」
「ふん、虎か──なら俺はその虎を大いに称えるな」
「……っ」
「名子役と言われ持て囃され続けた人形みたいなお前に命を吹き込んだ──
二週間足らずでお前にそんな顔をさせるなんてよっぽど一筋縄じゃいかないってな……」
・
社長は上半身を乗り出して俺を覗き込む。
「野生だろ?その虎は…」
そう囁いてククッと笑った。
「なんでわかる?」
「ああ…──はは、飼い慣らす筈が常に命の危険に晒されてれば人間、生きるのに必死にもなる。
人形のままのお前なら体のいいただのオモチャだ、手足もがれてバラバラになって飽きられてポイッ!──だからな……
つなぎ止めるのに必死だろお前も?」
「………」
さすが百戦錬磨…
悔しいけど当たってる──
ソファの肘掛けに肘をついて頭を支えながらチンピラのゴタクを聞いてやった。
「人間は必死に生きた時にこそ輝く──生きるんだよ!舞花とはどんな恋愛するかと思ってみたが、舞花じゃダメだったらしいな…」
「じじぃ最低ー…なに、けし掛けてんの?」
俺の為の捨て駒かよ?
どうりでやたら迫って着たわけだ──
「は、…俺は切っ掛けを提供するだけだ──あとの物語は当人達が勝手に作り上げる。まあそのお陰で舞花にも仕事が入った…プラスになる浮世話は大歓迎だな」
「何が浮世話?」
「とにかく…お前の仔猫ちゃんはまさしく救世主だな俺にとって…だから付き合いをやめろとは言わん」
「ふん…」
「てことで、本題に入るか……」
「…?」
その虎猫が自分の姪だとも知らず、社長は意味深に切り出した。