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エツコとオッちゃん
【女性向け 官能小説】

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エツコとオッちゃん-1

1.
 遅い夕食を終え、コーヒーを立てながら後片付けを済ませていると、電話のベルが鳴った。
「はい、山路です」
「こちら、東山寺住職の北川と申しますが、品川悦子さんをご存知ですか?」
「ええ、老人施設の介護師をしている品川さんでしょうか?」
「そうです。実は先ほど寺の門前で蹲っておりまして、救急車を呼ぼうとしましたらそちらに電話をしてくれと言われまして、お電話をしている次第ですが」
「分りました、すぐに伺います」

 山路敦夫は、大学病院の外科医をしていたが、今は退職をして、品川悦子の勤務する地域の擁護老人ホームにボランタリーとして週に一回出かけている。
 心臓手術のベテランとして高い評価と実績を上げていたが、視力が落ちてきて、繊細な仕事に無理を感じ始めた。緑内障がかなり進行していた。
 十分やって来たからもういいかと、定年を待たずに退職をした。

 視力以外に悪いところも無いので、ボランタリーをしている。
 若いときから、フラメンコが好きで、スペイン人のギター弾きに師事をした。この先生は抜群の技量とセンスを持っていたが、楽譜が読めない。
 話によると、父や兄が弾くのを盗み見て覚えたのだという。スペイン人と言っても、ジプシーの出身らしい。
 山路も、小学生の音楽の時間でどうしても楽譜が覚えられずそれきりになっていたので、これ幸いと先生の手ほどきのまま、暗譜で弾くことを覚えた。
 暇に任せてギターでアドリブのラテンなどを弾いているのを聞いた地元の医師が、老人ホームで音楽を弾いてくれるボランタリーを探していると伝えてきた。
 正式に習ったギターではないが、アドリブでいいなら役に立ちたいと引き受けたのだ。

 その施設に、ピアノを弾く介護師が居た。品川悦子だ。
 週一回の歌の時間に、手が空いている時にはエツコも仲間に入って、山路とデュエットをすることもあった。

 エツコは頭のいい、年寄りに優しい娘だった。入居者からは、エッちゃん、エッちゃんと可愛がられていた。

 


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