スキャンダル-3
・
冷凍食材たっぷり保存タイプの冷蔵庫。大小に分かれたフリーザーパックがキレイに取り出しやすく並んでる。
「今夜は何を作ってやろう…」
焼き飯にがっつく姿を思い出して自然と笑みが浮かんだ。
周りにまとわりついて料理を眺める仕草はかなり可愛かった上に、肩に顎なんか乗せて甘えられたからたまらない。
あれがスイッチだったってわかってんのかなあの人…
冷蔵庫を簡単に物色すると、シャワー浴びたての濡れた髪を拭きながらリビングのソファに腰かけた。
晶さんの出掛けた後の部屋でカーテンを全開にして室内を見晴らしよくすると小窓から外を覗いた。
八階建てのオートロックマンション──
髭の家主が放蕩なお蔭で案外快適な居候生活。
子役から芸能界の一線で活動していると一般の知り合い何て中々出来ないし、この同居は俺にとっても初の試みでもあった…
「まあさか…惚れちゃうなんてなぁ…」
ソファの上で独り呟く。
芸能界とは関係無しに一般の男友達とやらを望んだ結果の流れってやつだ──
テレビの前に目をやれば昨夜、そこのフローリングでしつこいくらいに抱き合った残像が蘇る──
「──っ…やばい…さっそく興奮してきた……」
ちと自制しなきゃな、うん。
ヤることばっか考えてたら嫌われるし、もっと大事にしなきゃ……
取り合えず、今夜は…
好きと言ってもらえるように頑張ってみよう……。
16時──
あと二時間もしたら喫茶店のバイトから帰ってくる。
時間を確認して閉じた携帯電話が急に鳴り出していた。
・
「おーい、元気か?我が家の住み心地はどうだ?」
「…ちょー最高!初めて社長に感謝した」
「なんだそりゃ?」
事務所の社長からだった。
「ところでなんで帰って来ないの?」
「あ〜、俺の帰りを仔猫ちゃんがあちこちで待ってんだよっ!体一個じゃ足りん、貸してくれ!」
「やだね」
相変わらずの酒池肉林か?
「俺が居なくて淋しいか?」
「とんでもない!」
晶さんと二人っきりですげー最高っ
出来ればずっと愛人巡りしててくれ
「晶とは仲良くしてるか?」
「……してるよ…」
仲良くし過ぎて二回も合体した──
なんていったらビビルか?
「──マスコミはどう?」
「あーまあまあの反応だな…」
「そ、藍原さんは?」
「あー、どうかな…ヘアヌードの話が来てるけど、今時素人も脱ぐ時代だからな…厳しいな…」
「社長が諦めちゃダメじゃん」
「まあな」
「今回のをきっかけにドラマのちょい役でも当たればいいのにね…」
「ああ、後は本人の売り込み次第だな…」
諦めと切り放し──
事務所側は手を尽くした。本人がこの世界でがむしゃらに生きていこうって意地がなきゃ芽は出ない。
24歳──
ちやほやされる歳はとうに過ぎてる……