〈不穏な空気〉-4
『君は亜季ちゃんに遠慮してくれたよね?僕だって愛ちゃんには遠慮したんだ。アイツだけ“でしゃばり過ぎ”なんだよなあ』
『そりゃあ亜季ちゃんはオマエのペットだからな。まさか俺が姦るワケにはいかねえよ……』
強がりもなく、首謀者は殊勝な言葉を呟いた。
この男に睨まれたなら、もう監禁部屋には居られなくなる……。
常に他人より優位に立ちたがり、調子に乗るととたんに傲慢な態度をとる面倒な男だということを、首謀者は嫌と言うほど知っている。
そんな狡い最低な性格を知っていたからこそ、その辺に細心の注意を払って付き合ってきた……だからこそ亜季に対して乱暴を働き、助けを求めて「お兄ちゃん」と呼ばせる為の芝居を打つまでしたのだ……。
『〔親しき仲にも礼儀あり〕……僕の好きな言葉なんだ。君には其れがあるけどアイツには無い。正直なトコ、失望してるんだよ』
『お前が言うな』と口から出そうになったが、それを言ったら全てがおしまいになる。
それに愛を自分だけの物にしたいのなら、この長髪男の言葉に乗るのは間違いではない。
『もう僕達は狩りはしないんだ。だから“頭数”なんて要らないだろ?』
『そ、そこまでは俺は言わねえけどよぉ……』
徒党を組んだのは、単純に狩りを成功させる為だった。
一人より二人、二人より三人の方が成功率が上がるのは必然である。
だが、もう自分達が手を汚す事はない。
“上げ膳据え膳”で監禁部屋に連れ込まれてくる美少女を姦して楽しむだけならば、なにも〈仲間〉は必要ない。
個人の欲望を思いのままに叩き付け、好き放題に嬲った方が楽しいに決まっている。
『横から失礼。君達が前園姉妹を楽しんでる間、あの人にはウチで飼ってる家畜で遊んでもらってて構わないよ?それにあのデータを使って拉致した新しい牝も居るし……その方が君達三人が満遍なく楽しめて、結果的には良いんじゃないかな?』
当人が知らないうちに、話は決まってしまった。
環境と状況の変化は仲違いを生み出し、それと同時に長髪男の発言力の強さまで浮かび上がらせた。
『お腹冷やすと風邪引いちゃうよ?……クッククク……ずっとお兄ちゃんと一緒だからね、亜季ちゃん?』
カーディガンを着直させると、まだ意識のない亜季の素足を撫で、枷の跡のついた足首を労るように舐めた。
拘束を弱めたとは言っても、まだ両手には枷が嵌められているのだ。
か弱い少女にはこれでも充分であるし、なにより亜季は長髪男の物なのだから、好きにさせておけば良いのだ。