「ウソをつくつもりだった」-1
1-10-4-1
「この数字、なに?」
彼氏があたしに聞いてきた。
あたしのメルアドに入っている、11041という5つの数字。
「…秘密」
少し考えて、あたしは教えないことに決めた。
「そんな秘密にするほどの数字なのかよ。」
彼氏がハハっと笑う。確かに、内緒にするような内容ではないけど。
ぺらぺら人に喋っていい内容ではない。
「んじゃ教えたげる」
あたしは彼に顔を近付けた。
「知りたい?驚かない?」
真顔で彼の瞳を見つめる。
「ああ、言って」
少し、彼がびっくりしている気がした。
「愛しいって読むの」
1-10-4-1
イトシイ
「…ああ、そういうことか」
彼氏は少し考えて理解したようだ。
「やっぱ、そんなに秘密にする内容じゃないじゃん」
「そうだね」
「おまえの誕生日じゃないし、なんだろーってずっと思ってたんだよ」
彼はテレビのチャンネルをかえた。
ゴメンね、伸二。
あたし、やっぱりまだ言えない。この5桁の秘密、墓まで持っていくかも。
そして、あたし達はまた何事もなかったようにテレビを見る。
近日公開の映画を宣伝する為に、バラエティには普段出演しない女優が出ていた。
なんだか違和感があった。それは、あたしがついた嘘のせいかもしれない。
バラエティの内容は頭に入っていなかった。
「んで、本当はなんの暗号?」
彼が思い出したようにあたしに聞く。
「だから、愛しいって意味だって」
あたしは作り笑いでごまかす。