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「ウソをつくつもりだった」
【純愛 恋愛小説】

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「ウソをつくつもりだった」-5

『手術をしてもしばらく君に会えないみたいだから、手紙を書くね。

手術が成功したら、一番に君に知らせるよ。残念ながら、手術は失敗しましたって。

だってエイプリルフールじゃん。ウソを言っても許される日だから許してね。

君は怒るかな。泣くかな。笑うかな。想像できないよ、早く会いたい。

あと、もし僕になにかあっても僕のこと忘れないでね。忘れられるのはさみしいから。

好きです。ウソじゃないよ。エイプリルフールは関係無しで。』


バカだよ。あたしもだけど、あんたも相当だよ。

死んだら、何も意味無いじゃん。思い出に変わっていくだけだよ。それはすごく恐い。

あたしは泣いていた。なぜか手術は成功するとしか思っていなかったのだ。

心の準備なんてまったく出来ていないまま、彼は突然あたしの前からいなくなった。

泣いた。大声で泣いた。

彼がこの世界にいないことが悲しくてしょうがない。

嘘でしょ、ほら、今日はエイプリルフール。
怒らないから出てきてよ。どこかに隠れてあたしの反応を見て楽しんでるんでしょ。

だから、出てきてよ。

あたしあんたが出てくるまで絶対泣きやまない。あたしが泣くのは、あんたしか止められない。


今まで生きてきて、

こんなに悲しいことは無かった。



「だからゴメンね、伸二。あたし、健太くんはどうしても忘れられない」

伸二はゆっくりあたしの頭を撫でた。

伸二に話したことが良かったかは分からないい。
でもあたしのなかで何かが少し楽になった。

伸二が撫でてくれる手の感触に安心した。

11041

それは、彼がこの世に生きていたとても愛しい証。


外から聞こえていた雨の音は、いつしかやんでいた。
そのことにあたしは気付く。少し寂しくて、少しほっとした。


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