朝凪-5
「そうか。これで―――お別れだね。会うのも最後だ」
「うん」
やだ。やだ、やだやだやだ。
ずっとずっと博之と一緒にいたい。
心の中で何回も願ったその言葉を
私は思い切り強い意思で飲み込んだ。
「これで、やっと成仏できるよ」
私は膝を抱えて泣き崩れた。
「ナツ。俺の分まで幸せになって。
いつまでも見てるから」
私の嗚咽だけが海へとこだまする。
3年前のあの日。どうして博之は死んでしまったんだろう。
涙でぐちゃぐちゃの顔をあげて
隣を見ると、もうそこには誰もいなかった。
風が吹き始めた。
朝凪が―――終わった。