憂鬱な旅館-1
私は今にも胸が張り裂けそうだ。本来ならウキウキ楽しい彼との旅行、だけど今年の4月に彼は自分の平穏な生活の為、北海道から彼のお兄さんの居る青森へ引っ越しそして私の元へ離れる…かもしれない、そのさなかでの不思議なお出掛け。
「大丈夫?疲れてないか?」
「え、あーうん!」
彼が決めた旅館は町外れの遠い場所に構えていて、バスで降り10分程歩かなくてはいけなく、体力に自信の無い私を気遣う彼の暖かくも優しい一声…、それはとても嬉しいけど
とても苦しい。
濁った私の心とは真逆に上機嫌に目的地へ足を運ぶ彼、本当ならそれでも彼を信じて彼との時間を楽しむべきなんだろうけど、不安な眼差しを彼の背中に刺す事を止められないで
いる私であった。
佐伯…君。