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恋のMEMORY
【少年/少女 恋愛小説】

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憂鬱な旅館-3

「どうして駄目なんだよっ!」
「蓮…。」

同時刻、僕はどうにかあたると柊さんが悲しまないよう働きかけていて、自宅の居間、テーブルをバンと叩き、どっしりと椅子に構える父さんに訴えかける。

「このままだとあたるはあの暗い家で苦しい思いをして…、いつか心が壊れちゃうんだよ
だったらぁ。」
「彼の事は知ってる、母さんも気の毒だって…。」
「そうね、可哀想よ、あれじゃー。」

父の横で立ち、そう語る母。

「だったらぁ。」
「青森へ行くんだろう?経済力のある彼のお兄さんと、そうしたら。」
「確かに、それなら生活も安定してあたるも心が落ち着くだろう。」
「ならそれで…。」
「けどっ!…それだとあたるは柊さん、彼女と別れなきゃいけないんだ。」
「んー、だがそれは仕方がないだろう、安定した生活には代えられないし、その子だって
それを望んでる、会いたきゃメールや手紙を送れば良いし。」
「!!っ。」

父のあまりにも淡泊すぎる考えに言葉を一瞬失うが。

「バカねぇー、お父さん。そんな簡単に割り切れるもんじゃないでしょー。」
「いや、しかし。」

僕が言い返そうとした事を母さんが言う。

「ずっとその人に会えないんだよ?傍に居ないんだよ?メールや手紙だってたまーにだし
そりゃ柊さんだってあたる君の幸せは願ってるだろうけど、やっぱ寂しいし本音は行って
欲しくないのよ。」
「…だからって家に置くってのもなぁー。」

あたるとは家族ぐるみで小さい頃から仲が良い、お泊りをした事だって何度かある。
今の家に居たら精神が壊れるのも時間の問題、かと言って青森へ行けば大好きな恋人の
柊さんと別れなければならない、それだったら家に養子みたいに、と言うのが僕の本来の
主張だ。

深い溜息と共に熱いお茶をテーブルに置く父。

こう見えて家の家計は火の車、父の給料も大して高くなく、凛の入学費だってあるのは
知っているけど。

「お願いだよ、これじゃー二人は…。」
「うーん。」
「私も、そうしたいのは山々だけど…。」
「!!」

夫婦揃ってうなだれる。

すまない、あたる…力になれなくて。


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