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恋のMEMORY
【少年/少女 恋愛小説】

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憂鬱な旅館-2

旅館でのチェックインをテキパキと活気良く済ませる彼に何の気もなく視線を置く私。

とてもこじんまりとした小さな旅館、今年1月にお爺ちゃんと皆とで行ったホテルと比べて施設も少なくお客も少ない本音を言えば少しテンションが下がり肩の力が落ちる。けど
高校生の私たちの経済力からはこれが限界、いつの間にかバイトをしていた彼、そこの
給料と彼のお兄さんから僅かにお金を貰い、それでも足りない旅費は私が出し。

「さて、取りあえず荷物部屋に置いてくか!」

受付を終え、クルッと私の方を振り向く彼。



お腹もまだ空いていなく温泉を入るにしても日が暮れていなく、ゲームコーナーで時間を
潰す事にした。とても楽しくいつの間にか佐伯君が遠くへ行ってしまうのでは?…と言う
心配は消えていて、彼が青森へ行っちゃう話何か無かったあの頃に戻ったみたいだ。人は
楽しい事をするとウジウジした気分が晴れるものだ。

「いーぞぉ、落ちるなよー。」
「むむむ。」

UFOキャッチャーのぬいぐるみを掴んだクレーンにジーと視線を向ける私達。

「おっ!いやったぁー♪」

無邪気にはしゃぎ、取り出し口から景品を取り出す彼。それはサルのぬいぐるみで…。

「はい!」
「え…。」

案の定それを私に差し出す。

「くれるの?私に?」
「あぁ!思い出の品として。」

思い出の品?

それは自分が居なくなっても寂しくないようにと、それとも…。

「めっちゃ可愛く映ったねぇー。」
「ホントだねぇー。」

プリクラコーナーから二人組の若い女性が出ていくのを見かけ。

「佐伯君!撮りましょう、プリクラ。」
「おっ?…あぁ!」

何時までも落ち込んで彼に振り回されてばかりでは駄目だ、私は曇りそうな思いを振り払うように進んで行動に移す。

「おぉ、ドーナツのマーク一杯だなぁー。」
「ふふ、あっ肉まんのもあーいや豚まんか。」
「どっちも似たようなもんだよ。」
「色んなスタンプマークがありますね、じゃこれも。」
「サンキュー♪」

彼が青森へ行く事なく、それでいて生活が人並に平穏に過ごす事は出来ないのだろうか。
だけどそれを今考えても仕方がない、今は今にしか出来ない事をするだけだ。

何を考えているのかその真偽も不明のまま子供のような笑みを浮かべる彼と、複雑な思いを背負いつつ取りあえずの笑みを浮かべる私の顔が、そのプリクラに刻まれた。






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