悪鬼-1
第19話 〜〜悪鬼〜〜
股間に、母の顔がある。
強ばった長大な陰茎が、濡れた粘膜に包まれている。
はあはあ、と聞こえていた荒い息づかい。
ヌルリとした舌が、ねぶるように先を舐めては、思い出したように深く呑み込んくる。
きつく締めた唇で、いやというほどしごかれた。
母の唾液にまみれた手のひらは滑らかに動いて、それはいつまでも止まる気配がなかった。
はあはあと、荒ぐ息づかいに混じって聞こえていた切なげな声。
ほんのかすかな囁きだったが、タケルは確かに聞いた。
タケル様……タケル様……と、母がタケルの名を呼んでいる。
タケルは跳ね起きた。
夢ではない。
幻でもない。
母がタケルを欲しがっている。
腹のあたりに掛かっていた布団を投げ飛ばした。
飛び乗るように母の腹に跨り、肩を押さえつける。
途端に、母の脅えた目が向けられる。
ほんのわずか、抵抗するかのようにタケルに向かって両手を突き出した。
その手を難なくベッドに押さえつけて、上から睨めつけた。
口の周りがぬらぬらと唾液に濡れ光っていた。
頬が汚れ、あごが汚れ、母のきれいな顔に淫らさというアクセントを刻んでいる。
まるで化粧っけのない顔なのに、たまらなく淫靡に見えてならない。
泣き出しそうな顔が、ミナによく似ていた。
この女がミナを産んだ。
この女の膣から、ミナはこの世にひねり出された。