悪鬼-6
ミナによく似た母の顔だった。
なにもいわず、伸ばしていた母の腕を引っ張った。
そのままベッドから下ろして、部屋を出た。
母の腕を引きながら階段を下りて、浴室へと向かった。
冷たい室内に入ると、握っていた母の腕を離した。
シャワーのコックをひねり、自分だけ温かいお湯の雨に打たれた。
背中を向けたままだった。
瞑想するかのように目を閉じ、全身が濡れた頃に振り返った。
母は背中を丸めながら困惑した眼差しを向けていた。
裸の自分を恥じるかのように、しっかりと内股を合わせて閉じていた。
「来いよ」
それだけを言った。
おずおずと母がとなりへとやってくる。
小柄な母は、タケルの胸ほどしか身長がない。
見上げる瞳のなかに戸惑いがあった。
息子と禁断の関係になった。
その息子は、なにも言ってくれない。
涙をにじませた瞳がふるふると震えている。
タケルは見おろしながら唐突に母の後ろ髪を掴んだ。
母の顔を上向かせた。
脅えた表情をみせる母の顔面にシャワーを浴びせた。
「い……いや……」
拒むように両手をかざして遮ろうとした。
だが、それだけだ。
理不尽なことをされても母は脅えた表情をみせるだけで怒りだす気配がない。
タケルはシャワーのヘッドを戻すと、上向かせた顔に自分の顔を重ねていった。
「う!……うう……」
荒々しく唇を塞いで、乱暴に口の中で舌を暴れさせる。
さっきは夢中になりすぎたあまりに、なにも確かめることができなかった。