strawberry-1
いずれ大人になれば、大半の人間が経験するであろう行為、セックス。
興味を持つことは自然なことなはずなのに、どうして人を変態呼ばわりするのだろう。
ついでに言えば、人を変態だと言うのなら構わなければいいのに、俺の一挙手一投足にいちいち突っかかっては、親の仇のように非難して。
あー、ホントうぜえ、この女。
話すだけでイラついてくるーー。
◇
「ギャー!! 野々村、あんたこんなもん観てんの!?」
やべ、見られた。
兄貴の部屋からこっそり拝借してきたエロDVD。
友人の酒井に貸すため、ロッカーに置いてあったカバンからそれを出した所で、背後から甲高い悲鳴が聞こえてきた。
でも、放課後で人がほとんど廊下でざわついていたのだけが幸いか。
「うっせえな、別にいいだろ」
それでも、無駄に声を上げたコイツがやけにウザくて、自然と舌打ちが出た。
常日頃抱く感情に、身体は実に正直だ。
そして振り返り、声の主を一睨みすると。
「よくないわよ、キモい! 変態!」
と、今時誰もしないようなお下げ髪を揺らしながら、がなり立てる桜井の刺すような視線とぶつかった。
顔を真っ赤にしつつもギャアギャア喚く姿に、思わず耳を塞ぎたくなる。
あー、なんでコイツはいつも俺に突っかかって来るのだろう。
「おい、そりゃねえだろ、中2ともなればこういうものを観るのは当りま……」
「ギャー!! そんなもん見せないでよ!!」
慌てて両手で顔を覆う桜井は、その耳まで真っ赤になっていた。
そんなに変態なジャンルじゃないんだけどな、とDVDのケースをひっくり返してみると、そこには“岬はるかのHAPPYなエッチをしようよ!”なんて少々恥ずかしいタイトルがあった。
これは何度か見たことあるけれど、決してアブノーマルなものではない。
可愛い女優とそこそこ見映えのいい男優がシンプルにセックスするだけの、いたって健全なAVだ。
なのに、ろくにパッケージを見ない内から人を変態呼ばわり。
うーん、なんてコイツは堅物なんだ。
まだ火照りの収まらない桜井の赤ら顔を横目で見ながら、続いてパッケージに目を落とした。
桜井とは同じ保健委員をやっているから、全く接点がないわけじゃないけど、正直言って苦手なタイプ。
成績は常にトップクラス、品行方正な真面目なガリ勉タイプの彼女。
桜井が友達と話していることと言ったら、さっきの授業の内容とか、テストの範囲とか。
かたや俺は、勉強は苦手、給食・体育大好き、エロいことにも興味を持ち始めた中2男子。
一般的な中学生男子そのものだ。
そんな俺が、ガリ勉メガネの桜井と相容れるはずもなかった。
桜井も桜井で、俺のことがすごく苦手だと思う。
掃除の時に箒で野球の素振りとかして遊ぶし、委員会の会議の時だって寝てばかりだし、授業の予習は大抵誰かのノートを写してばかりだし。
要は、俺と桜井はすごく相性が悪いのだ。