strawberry-3
「桜井」
「何よ」
「お前、こういうのに興味は全くないわけ?」
「ない」
バッサリ一刀両断の桜井は、隙を全く見せない。
全くもって、可愛くねー。
フンと鼻を鳴らしてから、彼女はさらに続けた。
「こういうの観て興奮する奴なんてケダモノとしか思わないし」
「ほー……」
言ってくれるじゃねえか。
その発言は、男全部にケンカを売ってるとみなしたぞ?
いつも俺に対して強気な桜井には、口喧嘩で勝てた試しがない。
その生意気な横顔を見てると、今までの連敗記録が蘇って、自然と下唇を噛み締めてしまう。
コイツをなんとかギャフンと言わせる術はないものか。
艶々赤く輝くイチゴのヘアゴムを眺めている内に、頭の中の電球が光り出す。
そして俺は、自分の肩くらいまでしか身長がない桜井の顔を覗き込んだ。
「……じゃあ、お前はこういうの観ても興奮しないってんだな?」
「当たり前でしょ、他人の裸なんて気持ち悪いとしか思わないわ」
眼鏡の奥の強気な瞳が、俺を睨みつける。
よく見ると、スッと鼻筋が通っていることに気付いて、俺はニヤリと不敵に笑った。
そのいけ好かない鼻っ柱、へし折ってやる。
「じゃあさ、桜井ーー」
そう思いながら、俺は口を開いた。
◇
「おじゃまします……」
桜井は恐る恐る、俺の部屋に足を踏み入れた。
「そんなよそよそしくしなくていいよ、家には誰もいないから」
そう言って俺は、冷蔵庫から持ってきたオレンジジュースをグラスに注ぎながら桜井に手招きした。
言われて遠慮がちにローテーブルに座る桜井は、すっかり借りてきた猫のよう。
さっきまでのケンカ腰の姿はどこに行ったのやら。
勝気で、猫のようなつり目が、せわしなくあちこちを見つめていた。