strawberry-2
なのに根が真面目な桜井は、不真面目な俺にいつも面と向かって注意したり怒ったりしてくる。
きっと、俺のやることなすことがおちゃらけていて不真面目だから、許せないのだろう。
だけど、俺だってコイツの正義感が強い所もまた鼻につくわけで。
だからこそ、人のプライベートな部分を勝手に見た挙句、変態呼ばわりするこのブスに、さすがの俺もカチンときたのだ。
「つーか、これをどうしようが勝手だろ、てめえに関係ねえじゃんか」
「そういうキモいの持ってるからキモいって言って何が悪いのよ!」
あー、ウザい。人のことなんていちいち気にしなきゃいいだろうが。
そんな感じのことを桜井に訴えても、頭に血が上った奴はまるで聞く耳持たない。
廊下で帰り支度をしたり、部活へ行く準備をしているクラスメイトの視線がチラチラ気になり出したので、俺は彼女を宥めるように人差し指を唇にあてて、声のトーンを下げろと伝えた。
「あのな、これは兄貴のだから俺のもんじゃねえ。それに、友達に貸すだけだから、俺は観てねえんだよ」
嘘も方便、ここで観たことあるなんていうとうるさいからな。
だけどやっぱり桜井は、不服そうに頬を膨らませて俺を睨んだまま。
何だよ、エロDVD一つでこんなに騒ぎ立てるなんて、どんだけ潔癖なんだよ。
中学生ともなれば、俺達男は女の身体に興味が出てくる。
初めてAVを観た時の衝撃は、興奮したなんて言葉で表せないほどで、数日間は寝ても覚めてもそのセックスシーンが頭から離れなかったもんだ。
女は、男の身体に興味を持たないのだろうか?
同級生の間でも、ボチボチ誰と誰が付き合ったという話は出て来たし、となると、セックスも自然と経験していくもんだと思っている。
だけど、目の前の桜井はどうだ。
眼鏡。他の女子に比べてやや長めのスカート。お下げ髪を束ねるイチゴのヘアゴムがまた一層ガキ臭い。
こんなダサい桜井だからセックスはおろか、恋とかそんなものにも興味はないのは一目瞭然だ。
だから、きっとセックスは汚らわしいものだと決めつけているのかもしれない。
セックス=悪、そんな図式が桜井に出来上がっているとしたら、コイツにAVを観せても果たして興奮しないのだろうか。
ふとした疑問が湧き上がって、俺はおもむろに口を開いた。