衝撃-8
「お兄ちゃん、学校へ行かないの?」
すぐに昨日とは違う服に着替えて、ランドセルを背負いながら下りてきたミナは、まだ着替えていないタケルを見て、不思議そうに訊ねた。
「今日は、遅くても大丈夫なんだ」
簡単な答えを返してやると、ミナは、ふーんと、いっただけで、たいした疑問も持たずにいつものように学校へと出掛けていった。
ミナがいなくなると、タケルはキッチンのダイニングテーブルに座りながら、しばし、ぼんやりとなにもない空間に目を向けた。
やはり覚悟は決めても緊張はする。
これから、母の寝込みを襲いに行くつもりだった。
夕べのことが気掛かりではあったが、それよりも母を犯そうとする自分への自問を繰り返していた。
一度踏み込んでしまえば、二度と戻ることはできない。
この日常は、永遠に消えるのだ。
その脅えが、わずかにタケルを躊躇わせていた。
だが、ミナを永遠に自分のものにしてしまいたい気持のほうが、はるかに勝る。
タケルは覚悟を決めると、キッチンを出た。
ゆっくりと一歩一歩階段を踏みしめながら2階へと上がった。
まっすぐに両親の寝室を目指した。
ドアを開けると、母はさっきと同じように身体を横にして眠っていた。
部屋に入るなり、タケルは服を脱いだ。
なにも身につけない生まれたままの姿になって、そっと掛け布団をめくり上げると、母の眠るベッドのなかに潜り込んだ。
母の背中が目の前にある。
ほっそりとした肉感の薄い背中だった。
母は、深い眠りのなかにあるらしく、まったく気づく様子はなかった。
じっと、細い背中を見つめた。