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わたしを見つめて
【熟女/人妻 官能小説】

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1)-3

 新宿警察署の山本一。名前は覚えた。
しかし、まさか本当に水を出すのも憚られポットの湯でインスタントコーヒーを作って渡した。盆に乗せて刑事のところに持って行くと、双眼鏡を覗いたまま後ろ手でカップを持とうとする。
「熱いですよ」
佐枝子はカップを手渡すと、受け取る男と手が触れた。
「どうも」
「……あの、あとどの位かかるんでしょう」
「さぁ、相手次第ですね」
「そんな、困ります。買い物にも行きたいですし」
「どうぞ。私が留守番してますから」
刑事は薄笑いを浮かべた。
「ああ、美味いな」
コーヒーをすすると、改めてリビングを見回した。そして、ある一点に視線を定めた。佐枝子もその先を見る。
 本棚に立ててある写真だ。結婚式の時のモーニング姿の夫と白いドレスの佐枝子が微笑んでいる。佐枝子の豊かな胸がくっきりと見えるデザインだ。これ見よがしだから嫌だと言ったが、夫は「この方がスタイルが良く見えるし、同僚のやつらを羨ましがらせたい」と言ってこれに決めさせた。
「きれいですね、奥さん」
「見ないでください。人の家をじろじろ見るなんて、いくら刑事さんだって失礼ですわ」
「ああ、すみません。いろいろと見るのが仕事なもんでね」
刑事は半分ほど飲んだカップを佐枝子に返した。
「あの」
「はい?」
「張り込み?こう言うのは一人でなさるものなの?TVなんかでは、よく二人組ですよね」
刑事は双眼鏡をリビングテーブルに置くと内ポケットからタバコを出した。佐枝子はとたんに眉をしかめた。この男が帰ったらカーテンを洗わなくちゃ。
「どこも人手不足でして。まぁ、相手も凶悪犯じゃないんでね。内偵ってやつですかね。でも、確かにトイレに困るな。その時は奥さんが代わりに見張ってくださいよ」
佐枝子は答えずにカップを洗うためキッチンへ戻った。
カウンター越しに見ると、刑事はまた細く開けたカーテンの間から向こうを覗いている。
カップを洗い終え、寝室に戻ろうとする佐枝子を刑事は呼び止めた。
「くれぐれも今刑事が家で張り込みしてるなんてSNSに書き込まないでくださいよ。そう言う情報は広がったらまずいんでね。それで取り逃がしたら、あんた責任取れないでしょ?」
初対面の人間に”あんた”などと呼ばれ、佐枝子は腹立たしくなった。
「そんなことしませんわ!」




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