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わたしを見つめて
【熟女/人妻 官能小説】

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1)-2

 男は答えず、目の前で四角いものを広げた。それが警察官の身分証と理解するのにさほど時間はかからなかった。
ケースに入っている写真は目の前の男と同一人物だ。
少し長めの前髪と、細くはないが鋭い目。口はやや大きめだ。
“警視庁新宿警察署 巡査部長 山本 一”
「刑事さんが、なんのご用でしょう」
「朝っぱらから申し訳ないんですが、少々ご協力いただきたいことがありまして。とりあえず、ドアを開けてもらえませんかね」
「……用件を先に言ってください」
「ああ。少しばかり部屋を貸していただきたいんですよ。向かいのね、マンションを張りたいんですが。ちょうど島村さんの部屋がいい具合なんですよ」
「でも、そんな急に言われても」
「容疑者の動向がわかればすぐに退散します。ご協力願えませんか?」
「時間は?どのくらいですか」
「ですから、動向がわかればすぐに。捜査に協力してくださいよ、奥さん」
「あまり大きな声を出さないでください。ちょっとだけ、お待ちください」
佐枝子は急いで寝室に戻り、パジャマを脱いで服を身に着けた。面倒がらずにすぐに着替えておけばよかった。、急いでストッキングに足を入れ、ラベンダーのニットとセミタイトのスカートを履いた。慌てて髪を梳かした。
「お待たせしました」
ドアを開けると刑事は無表情で部屋に入って来た。

 
 あれからもう2時間ほど経つ。
佐枝子もカーテン越しに向かいのマンションを見たが何階の、どの部屋を見張っているのかわからない。
佐枝子はドレッサーの上で充電していたスマホを取り、夫に電話をかけた。
夫は大学病院の内科の医師だ。
「島村の家の者ですが、島村を呼んでいただけますか?」
しかし、診察が立て込んでいてすぐには戻れないとのことだった。ただでさえ、緊急以外は職場に電話するなと言われている。
帰って来たら叱られるかも知れない。
その時、リビングから自分を呼ぶ声がした。
佐枝子はスマホをベッドの上に置き、リビングに向かった。

「申し訳ないんですが、何か飲み物をもらえませんか?」
「は?」
「急いで来たもので、途中で買い忘れたんですよ。水でもけっこうですから」
佐枝子はあからさまに嫌な顔をしてキッチンのカウンターへ向かった。なんて図々しい。
あの刑事が帰ったら警察署に苦情を入れてやる。



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