落書き犯の正体-7
あれから佐伯君とはロクに口を聞いていない。
故に彼がどう思っているのか、青森への引っ越しをどう考えているのか、さっぱり分からない。
常に行動を共にしている一条君に代わりに聞いても良かったのだけど、こういう事は本人に直接聞く方がスマートだろうし、何よりそれでも知るのが怖い。
自室は落ち着くな。
ゆったりと夜空を見上げる。
…そういや佐伯君、星を観るのが好きなんだっけ。
向こうに行ってしまったら、こんな風に考えちゃうのかなぁー。
「佐伯、くん、いっちゃっ!!」
そう思いに老けているとケータイが鳴りだし、驚く。
画面には私が今想っている人の名が。
私は少しの間を空け、電話に出る。
「もしもし…。」
「あっ、柊、さん。」
「佐伯…君。」
何だか久しぶりに耳にする彼の声。
「どう、したの?」
交わる期待と不安。ダガそんな私の気持ちとは別に予想外の事を口にする。
「今度、どっかに出掛けないか?二人だけで。」
「…えっ?旅行…ですか?」
「あぁ、場所はまだ決まってないんだけど。」
どういう事でしょう?でもきっと彼なりに…。
「分かりました、行きましょう!旅行へ。」
「そうか!じゃ、また連絡するから。」
「はい、待っておりますね。」
そう言うと電話は切れて。
佐伯君…。
私は……。
次回、24話に続く。