落書き犯の正体-5
静寂な音楽室、私はある人をこの部屋に呼んだ。
「何よー稲葉さん、私忙しいんだけど。」
「単刀直入に言うけど…貴女でしょ?例の落書き犯人。」
「っ!一体何の話?」
ギクリとし出す彼女。早乙女さんとは中学の時、短い期間だけど一緒の部活だった頃が
あって。
「柊さんの彼氏にフラれ、風馬君に…貴女からしたらいいようにおちょくられた貴女は
その腹いせに…。」
「……。」
「あの刺殺未遂事件の事を知っている人は数少ない、当事者の柊さんの彼氏、そして柊
さん達、…そしてお互いの利害一致の為、一度は声を掛けられた貴女。」
「だからってなんで私が、そんな。」
「動機だよ、確かに柊さん達は彼を憎んでやりそうだけど、柊さんとその話をしている内
にそんな筈はないって思えてきて。」
まるで探偵だ。
「さっき風馬君が男子に苛められてた時、貴女笑ってたよね?あれって。」
「…えぇそうよ!私がやりましたぁー、これで満足?」
「どうして?」
「…んー、何だろうねぇ、むしゃくしゃしてた…からかなぁ。」
「例の刺殺未遂事件はいつ知ったの?」
「たまたまよ。」
「まさか、あの現場に?」
「そうよ、気になって、そしたら…、大体は察しがついて。」
「何て事を…。」
「はっ!アンタには分かんないでしょうね…このもどかしさ、悔しさ!」
「早乙女、先輩…。」
責め立てよう思ったけど、彼女の横顔がとても寂しく見えて。
「もう、いいでしょっ!」
「……。」
この人も結局、断ち切れないで居たんだ、それの最も最悪な姿。
諦めるのって、認めるのって、とっても難しい…のかも知れない。