友達ではいられない-2
「……おい?」
「え、あっ はいっ!」
「オマエ、まだわかってないだろ?」
「な、何が?」
「さっきから何度も言ってるだろ?」
「だ、だから何を……」
「好きなんだよオマエがっ」
「……は?え、私???」
「ああ、だからその…… いまさらだけど俺と、付き合ってくれないか?」
私は呆気に取られてしまい、力無く体をベッドに横たわらせると、なんだかよくわからないままに、隠れるように布団の中へと潜り込んでしまった。
「おいっ!?何隠れてんだよっ」
「や、だって!なによそれっ わけわかんないよ!?」
実際、私の頭は混乱していた。
てっきり先輩と付き合うから私と別れるつもりだとばかり思っていたのに、蓋を開けてみれば先輩とは付き合わず他に好きな女がいたという事実。でも、その好きな女っていうのは私で、付き合ってくれって……私と?
「……じ、順を追って説明せよ」
「順もクソもねぇよっ!言葉通りだ」
「な、なんで……?」
「は?何がだよ?」
「なんで…… わ、私なの?」
「なんでって…… 俺は最初からオマエの事が好きだった、からな」
私は布団からチラリと顔を覗かせた。
「い、いまさらそんなの……」
「……やっぱ遅すぎたか?」
私は大きく首を横に振った。
「し、知らなかった……」
「だろうな」
「どうして言ってくれなかったのよ」
「いや、言うより先に抱いちまったからタイミング外しちゃってさ……」
「……ば、馬鹿なのっ!?」
仲の良い友達だった啓太。別に嫌いじゃなかったから、なんの抵抗もなく抱かれた私。正直、やりたかっただけ、そこにたまたま私がいただけ、そう思って疑わなかったのに……
結局、私は知ってるつもりでいただけ、啓太の事はおろか自分自身の気持ちにさえなかなか気がつけなかった。なのにそんな私を好きだなんて――啓太もまたどうかしてる。
「……ホントに私なんかでいいの?」
「は?いまさらそれ聞くのか?」
「だ、だって私、啓太の気持ちに全然気づけないくらい鈍感で…… んっ」
「そりゃ言わなかったからな?」
「じ、自分の気持ちにさえなかなか気づけなかったんだよ? あ、んんっ」
「でも、さっきちゃんと好きだって言ってくれたよな?」
「あ、あれはっ んんっ」
「なんだ違うのか?」
「ち、違わないけど…… や、あんもうっ んっ はあぁ……っ」
会話の端々で、何度も私にキスをしてくる啓太。その唇は、蕩けそうなくらい甘くて熱くて、もはや何を言っても無駄、啓太は私の言葉も気持ちも、すべてを飲み込んでしまう。
「ねえ…… 泣いても、いいかな?」
「おお、好きなだけ泣けや!」
その言葉に私は堰を切ったように、ポロポロと再び大粒の涙を流した。
春の風吹く3月の終わり。いつもと変わらぬ景色、ありふれた日常。
ひとつだけ何かが違うとしたら、それは明日、友達だった啓太が友達ではなくなってしまうことくらいだろうか。