私の知らない啓太-2
「ハァ… ん、ハァハァ……」
小刻みに震える体、絶え間なく訪れる快楽の余韻、力無くその場にぐったりと倒れ込む私。
そんな状態の私の体を、啓太はそっと仰向けに反転させると、抱き締めるように覆い被さりながら、ゆっくりとまた深くその腰を入れてきた。
「ハァ… ち、ちょっと ハァ… 激しすぎた、かな?」
「ど、どこが ハァ… ちょっとなのよ…… バカぁっ」
荒ぶり止まぬふたりの吐息。さすがの啓太も随分と疲れてしまったのか、すぐには動こうとしない。
「わりぃ……ちょっとだけ休憩、な」
そう言って何度も唾を飲み込みながら、息を整える啓太。こんな時でも右手でしっかりと体を支え、私に体重を掛けないようにしているだなんて、その相変わらずの優しさに、自然と愛おしさが込みあげる。
「私さ、啓太が……好きだよ?」
「……え?」
「や、違うのっ 深い意味じゃなくてね、その…… なんて言うか……」
思わず口を突いて出たその言葉に、動揺して慌てる私を、啓太はクスリと笑いながら、
「なんだよ?初めてじゃないか、そんな事言ってくれたの……?」
そう言って少し照れ臭そう私の頭をクシャクシャと撫でまわした。
「や、ちょっと!?だから勘違いしないで……ってば、 あ、はぁんっ」
ゆっくりとまた啓太の腰が動きはじめる。さっきまでとは全然違う、艶めかしくも優しいいつもの啓太の腰つき。
「なんかさ、よくわかんねぇけど……今日は色々驚かされてばかりだな?」
「な、なにがよっ」
「なにって…… 色々だ、よ」
「あ、やんっ あっ あぁ……っ」
少し、また少しと腰の動きを速めながら、ピンポイントで私の気持ちいい場所ばかりを責め立ててくる啓太。
勘違いなんかじゃない。勘違いだと信じて疑わなかったのは私の方だ。
啓太のなやましい腰つきが好き、見かけによらず厚い胸板、逞しい二の腕、体重を掛けない優しさも、愛のない愛を囁く低い声さえも。
そのすべてがもう、私に向けられないとわかっていながらも、私は啓太が好きだという事をいまさらながらにはっきりと自覚してしまった。
「啓太ぁっ んぁっ す、好きっ あっ 大好きなのっ んああぁ……っ」
絶対に言ってはいけない言葉、気づいてはいけない筈の想い。そんなの重々承知の上だけれど、もはや声に出さずにはいられない。
「ごめんね? んっ あ、いやっ んんっ 好きっ あぁっ 好きなのっ」
こんな状況でしか気づけないなんて、情けないにもほどがあるけれど、もう二度とこの腕に抱かれる事がないのなら、せめて最後くらいは――。
「俺もだよ……千夏?」
「え?な、何?いまなんて…… あ、やぁっ んっ あ、あぁ……っ」
耳元で私の名前を囁きながら、ひときわ深く腰を突き上げると、啓太はなんの前触れもなく私の中に、熱い精子を吐き出してきた。
「や、すごいっ んっ 啓太のがいっぱい…… あ、んああぁ……っ」
私はしっかりと膣内でそれを感じ取りながら、少し遅れて静かに三度目の絶頂へと達していた。