啓太の知らない私-1
翌朝、学校に行くと、神妙な顔した啓太が私に声を掛けてきた。
放課後、大事な話があるから時間くれだなんて、あらたまっちゃって。
だったら学校じゃなんだし部屋に行くよと、何食わぬ顔でそう言ってのけた私は、いつもより少し声が震えていたかもしれない。
放課後、重い足を引きずりながら、通い慣れた啓太の部屋へと足を運ぶ私。
「けーいた!来たよ?」
「おう、とりあえずなかに……!?」
玄関の扉を閉めるや私は、まるで久しぶりに会う恋人のように、両手を啓太の首にまわして、そっと唇を重ねた。
「ちょ、どうした急に…… んっ」
驚いた様子の啓太。何か言いたげな様子だけれど、そんなのお構いなしに私は、有無を言わさぬほどに何度も、これでもかとばかりに唇を重ねた。
啓太の言いたい事なんてわかってる。春風先輩と付き合う事になったから、私とはもう会わない、そう告げるつもりだろう。
よしんば私たちの関係を、人様に言えぬ淫らなこの関係性を私が口走らないように、さながら口止めでもするつもりなのかもしれない。
わかってる。わかってるけど今はまだ何も聞きたくない。
文字にすれば数行、言葉にしても1分と掛からないのだから、少しだけ、残された僅かな時間くらいは、せめて私の好きにさせて欲しい。
私は唇を重ねたまま、右手で啓太の股間をまさぐると、静かにその場に身を沈めながら、ゆっくりと啓太のズボンを脱がせはじめた。
「お、おいっ!?」
こんもりと膨らんだ啓太の股間。捲るように下着を脱がせば、すでにお腹にくっつきそうなくらいそれは、雄々しく反り上がっていた。
「……エッチ!」
「るっせ!し、仕方ねぇだろ……」
私は啓太を見上げながらクスリと笑うと、躊躇いがちにも根元からその太い茎に向かって舌を這わせはじめた。
「あ、ちょ!?くぅ……っ」
ビクンと腰が震えるや、まるで生き物のように跳ね上がる啓太の陰茎。私は驚きのあまり一瞬目を丸くするも、啓太の顔を覗き込むや、まるで見ててと言わんばかりに、少しずつ、先端を口の中へと含み込んでいった。
「ちょっ んあぁ……っ」
溜息に似た嬌声と共に、啓太の腰が再び震え上がる。
考えてみれば私は、いつもしてもらってばかりで、こうして啓太自身を目の前にするのさえも初めてな気がする。
だからどうすれば気持ちいいのか、どうして欲しいのかなんてのはよくわからないから、とにかく啓太の反応だけを頼りに、ゆっくりと唇で陰茎を擦りあげていくしかなかった。
「啓太、気持ち……いい?」
「あ、ああ すげぇいいよ」
眉をひそめながら、どこか恥ずかしそうに小声でそう呟く啓太。
芯は硬いのに表面は柔らか、自分には無いものだから戸惑いは感じるけれど、何故だか不思議と嫌な気はしない。
私は右手で根元を軽く握ると、唇の動きに併せるように、少しずつ絞るようにそれを扱きはじめた。
「んあ!そ、それはヤバイかもっ」
思わず腰を引く啓太に、私は構うことなく右手を動かした。
「ちょ、マジでヤバイって……」
「……いいよ?出しても」
「い、いいよって…… あ、くっ」
口内で膨れあがる啓太の陰茎。右手はもちろん唇に当たる感触でさえも、それがいっそう堅くなっているのがわかる。
「やべっ こんなの我慢なんて……」
「ん、全部ちょうだい?」
「ご、ゴメンっ イ……クっ」
そう言うや啓太は、両手で私の頭を軽く支えると、これでもかとばかりに勢いよく、溢れんばかりの精子を吐き出してきた。
「んっ!?んん……っ」
ドロリとした粘り気のある液体が私の口内を埋め尽くす。
生ぬるくて、匂いもきつくて、喉越しも最悪。お世辞にもおいしいなんて言えない代物だけれど、
「え?お、おい……まさか?」
「うん?えへへ、飲んじゃった」
何故だか一滴足りと無駄にはしたくなくて、気がつけば私は喉を鳴らしながら、すべてを飲み尽くしてしまっていた。
呆気に取られた様子の啓太。まさか飲み干すなんて思ってもみなかったのだろうけれど。
私にだってこれくらい出来るよ。今の私は啓太になら、不思議となんだってしてあげられる気がする。