友達でしかないのに-1
あれから数日、随分と過ごしやすい季節になってきた3月も半ばに入ったところ。私たちは相変わらず友達のまま、けれど時折、どちらからともなく思い出したように、気まぐれで体を重ね合わせていた。
:や、啓太っ んっ あ、そこ……っ
:こう、か?
:んっ あぁっ い、いいっ
誰にも言えない秘密を共有した事で、燃え上がったり、欲望に溺れてしまううのとは、どこか違う。
ただそういう雰囲気になる事が多かったから、明らかに増えてしまった沈黙を埋めるには最適だったから、なんとなくそれだけの理由で私たちは、気がつけば日がな体を重ね合わせていた。
:んっ そ、そこっ あ、いやぁっ
:こんなとこまで気持ちいいのか?
:ん、だって…… あっ んんっ
もちろん、痛いだけの時間はとうに過ぎ、少しずつだけど私の体は、日増しに感度があがっていた。
体の隅々まで行き渡るくらいに、繊細かつ丁寧な啓太の愛撫。誰とも比べる事は出来ないけれど、抱き合うたびに私の知らない気持ちいい場所を探し当てる啓太とてまた、日々成長しているのだと感じずにはいられない。
:じゃあ、入れるぞ?
:ん、あっ…… はあぁ……っ!
膣内を圧迫する啓太の陰茎。異物感しかなかったのはもはや過去の話。今では挿入されるこの瞬間こそが、私にとってなにより至福の時間となってしまっていた。
:あ、啓太っ んあっ け、啓太ぁっ
口を開けばはしたない嬌声しか出ないから、照れ隠しとばかりに私は啓太の名前を連呼する。
考えてみればそれもまた、充分なほどに恥ずかしい行為な気もするけれど、啓太の名前を呼べば呼ぶほど、何故だか不思議と安心、そして興奮する。
:なあ、後ろからしてもいいか?
:え?あ、やぁっ エッチ!
:もう少し腰をさげてみ?
:こ、こう?……あっ んやぁっ
正常位はもちろん騎乗位、座位、そして後背位。気がつけばいろんな体位も経験していた。
もちろん初めは恥ずかしくて、随分と顔から火が出る思いもしたけれど、今となってはそのすべてが気持ち良くて、つい、我を忘れて感じてしまう。
:んやっ 奥に当たってっ あぁっ
:奥がいいのか?
:んっ い、いいっ 奥……好きっ
ゆっくりとしなやかな啓太の腰の動き。クチュクチュといやらしい音が私の興奮を一気に加速させる。
:くっ このままイってもいいか?
:んっ い、いいよっ 来てぇっ
:あ、イっク……っ
:や、んんっ はあぁ……っ
勢いよく私の中に注がれる、啓太の熱い大量の精液。気持ちよさそうに、何度も腰を震わせながら、私の中で果てる姿がどこか愛おしくさえ感じる。
:ハァ… わ、悪い…… ハァハァ … また俺だけがその…… ハァ…
荒ぶる息を整えながら、耳元で、申し訳なさそうにそんな事を嘆く啓太。
:な、なに言ってるのよ?私だってその、ちゃんと気持ち良かった、よ?
確かに私はイってない。どんなに気持ちよくても、絶頂にまでは至っていない。でも、きっとそれが普通なんだと思う。
だって私たちは快楽主義なんかじゃないんだから。どこまでいっても結局は、ただの友達でしかないのだから。