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友達ではいられない
【ラブコメ 官能小説】

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友達のままで-1

「あ、おはよう啓太!」
「おうっ 朝っぱらから元気だな」
「えへへ、今日も寒いね?」
「ああ、この分だと積もりそうだな」

残寒厳しい2月の終わり。いつもと変わらぬ景色、ありふれた日常。

ひとつだけ何かが違うとしたら、それは昨日、友達だった啓太と寝てしまったことくらいだろうか。

たまたま独り暮らしの啓太の部屋に、借りていたCDを返しに行ったそのついで。お邪魔して、コーヒーを飲んで、一緒にCDを聞いていたらなんとなく、本当にただなんとなく、そういう雰囲気になってしまったから。

こんなのどこにでもあるよくある話。誰もが敢えて口にしないだけ。

ただ、ひとつ普通じゃない事と言えば、私も啓太もどちらもが、初めて同士だったという事くらいだろうか。

「体、平気か?痛みとかは?」
「へーきへーき!あ、けど……」
「けど、どうした?」
「なんかまだ挟まってる感じするっ」
「ば、バカっ!エロい事言ってんな」

いつもと変わらぬ明け透けな会話。もちろん周りのみんなには気づかれないように小声だけれど。

「はぁ…とにかく無理はすんなよ?」
「ん、あんがとね」

こうやってなんでも言い合うのが私たちのモットー。大切な友達だからこその暗黙のルール。

でも、体を重ねて初めてわかった事もある。それは啓太が、思っていた以上に優しい男だったと言う事実だ。

:あ、んっ ま、待って……っ!?
:わり、痛くしちまったか?
:ん、へーき!ちょっとだけ……
:やっぱさ……やめとく、か?

初めての痛みに戸惑う私を見て、何度もやめようかと言ってくれた啓太。自分だっていっぱいいっぱいのクセに、私の体の事ばかり考えてくれていた。

:んあっ は、入った?
:ああ、なんとか
:そかっ あ、……っ!?
:だ、大丈夫か?やっぱ痛いのか?
:あは、大丈夫!へーきだってば
:ゆっくり動くからさ、痛かったらその、ちゃんと言ってくれよ?

ようやく入った後も、いちいち私の反応ばかり気にしてくれちゃって、無意識なのかもしれないけれど、体重も全然私に掛からないようにしてくれてたっけ。

普段は平気で卑猥な話を持ちかけ、私を辱めては楽しんでいるクセに、ここぞの場面でああも優しくするなんてずるいにもほどがある。

うっかり私が本気で惚れてしまいでもしたらどうするつもりだろうか。

:へへ、結局最後までしちゃったね?
:ん、ああ…… しちゃったな
:気持ちよかった?
:そりゃ…… 俺は、な
:そ、ならよかった

もちろん、愛の言葉なんて囁かれた記憶は微塵もない。好きの一言さえも、互いの口からは出ていない。

だって友達だもの。嫌いじゃないのはわかっているけど、好きと言うのはなんだか違う。

セックスなんて気がつけばいつかは誰もがしている事で、私たちはたまたまそれが昨日だっただけの話。

初めてだったから痛いだけで、さほど気持ちいいものでもなく、所詮はこんなものかと拍子抜けもしたけれど、少なからず私たちは昨日、友達のままで恋人の仲間入りした。


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