嘘つきレン-3
「な、なに?ことり・・ってだれ?」
声が裏返ってるっての。
オレの目つきが変わったからか、みるみるレンの顔から笑みが消えていった。
「この前、オレと一緒に来た女の子だよ・・。」
忘れるはずは、ねえよな・・。
「あ、あの子のビデオなんて、ボ、ボク、知らないよ!」
レンの顔が強ばっていた。
相当焦った顔で否定してるが、そんなのこっちは折り込み済み。
「なあ、レン。お前、コトリを見たとき、すっごく驚いた顔してたよな?なんでだ?」
初めてコトリを見たこいつは、口を開けるほどに驚いていた。
「で、写真を撮らせてくれ、ともいった。なんでだ?」
そうだ、オレはアイコラで遊ぶものとばかり思っていたんだ。
でも、そうじゃなかった。
「そ、それは、あ、あの子が、か、可愛らしかったから驚いただけで、しゃ、写真だって、あんまり・・か、可愛いから記念にしたいと・・思っただけで・・。」
やっぱりコイツはビビってる。
もう、頭ん中はパニックだろう。
そりゃ、そうだ。
自分のやったことが露見したと思ってんだから。
焦ってるというより怖がっていた。
まあ、そうなるわな・・。
「ほんとにそうかぁ?」
ジロリ、とにらんでた。
よくよく考えたらな、不自然なんだよ。
「ねえ、お兄ちゃんが何かしたの?」
突然不穏な空気になり、奴の胸で甘えていたメグミちゃんが不安な目を向けてくる。
「大丈夫だよ〜。」
メグミちゃんに向かっては、にっこり。
「正直に言えよ、お前」
レンに向かっては、ガン飛ばす。
「あ、あの子のビデオなんて、ボ、ボ、ボク、ほんとに持ってないよ!!」
可哀想なくらい焦っていたコイツ。
レンは、頑強に否定を繰り返すだけ。
そりゃ、そうだ。
不自然なのは、そっちじゃねえもん。
「お前、キョウコのシリーズを全部揃えたんだよな?」
500万を掛けて購入した「お母さんと一緒」全シリーズ。
「え?な、なに?今度は、いきなりそっち!?」
バカ、こっちが本命だよ。
「シリーズは、全部で何本あった?」
「え?数?えっとね・・じゅ、10本・・かな。」
「キョウコのは何作品目だった?」
「な、なに?なんでそんな変なことばっかり訊くの!?」
「いいから、答えろ。」
泣き出しそうになってたアイツの顔。
となりのメグミちゃんも不安そう。
よくよく考えたら、ヘンなんだよ。
「い、一番新しいから、10作品目だと思うけど・・タ、タカにもそういったじゃない!?」
「ああ・・。」
そうだよ。
キョウコの作品は、一番新しいんだ。
(・・手に入れたばっかり・・。)
確かにこいつは、そういった。
だからな、不自然なんだよ。
「お前、キョウコのタイトルを先に手に入れて、あとから他のシリーズを購入したんだよな?」
「え?あ、ああ・・。そうだけど・・。」
こいつはオレの頼みに応えて500万もの大金を突っ込み、全シリーズのタイトルを揃えてくれた。
今までは、そう思ってた。
だが、そんなわけがない。
「何で、そんなヘンな買い方したんだ?お前ほどのマニアなら頭から順番に揃えていくもんなんじゃねえのか?」
「え!そ、それは・・。」
おかしすぎるんだよ。
「かねがねえわけでもねえのに、何でそんなヘンな買い方をした?何でキョウコのビデオが先なんだ?違うよな?」
「それは・・」
レンの顔がみるみる青くなっていく。
レンは生粋のマニアだ。
そんなコイツが歯抜けでタイトルを揃えていくはずがない。
ちゃんと順番通りに購入しているはずなんだ。
だけど、コイツはそれをオレに隠していた。
隠すってことは、気付かれてはマズいことがあったからだ。
それは、たぶん・・・。
「五所川原のビデオを出せ。」
「はい・・・。」
レンが、観念したように頭を垂れた。