狂乱の夜-3
――タカの部屋――
いつの間にか横になっていたらしい。
何かあったのかしらと、心配しているうちに、シホは、うつらうつらと眠り込んでしまった。
ファミレスで別れたきり、タカは戻ってこない。
驚かせようと思っていたから、部屋の中は真っ暗なままだった。
テレビの電源も切ってある。
暗闇の中にぼんやりと視線を漂わせた。
さっきまで眺めていた白い裸体が、暗い空間に残像のように甦る。
久しぶりに見たミノリは相変わらず細くて白かった。
意外なほど子どもらしい顔つきだったミノリは、ペニスを頬張る仕草にも、まだ初々しさがあった。
当たり前だ。
きっとあれは、ツグミと一緒にいた頃のミノリなのだ。
笑うと口元に八重歯が覗く可愛らしい子だった。
いつもツグミの傍から離れなくて、姿が見えないと泣いてばかりいた。
そのくせツグミを奪われそうになると、豹変したように凶暴になる。
よく揉め事を起こして和磨から折檻されていた。
母親と一緒に脱走したと聞いたときは正直ホッとしたけれど、まさかコトリと同じ施設に収容されていたとは思わなかった。
そのミノリがコトリの首を絞めて殺しかけた。
間違えたのだ。
きっと、ミノリはツグミとコトリを間違えたのに違いない。
似ているけれど、ふたりは違う。
ミノリは、Thrushにいた頃から、少し精神を病んでいた。
とても気の弱い子だった。
哀れには思うけれど同情は覚えない。
理由はなんにせよ、コトリを手に掛けたことだけは絶対に許せない。
あのひとが教えてくれなければ、そんな恐ろしいことがあったことさえ、わたしは知らずにいるところだった。