遠き日々-18
心が平和になると、ひとは新たな刺激を求めるものらしい。
園での生活に不満なんて何もなかったけれど、その頃のわたしにたったひとつだけ枯渇しているものがあった。
男だった。
まだ子供のくせに、身体は毎晩のように男を欲しがった。
わたしは、そんな女の子になってしまっていた。
自分で慰めて我慢できたのも最初のうちだけで、すぐに物足りなさ覚えるようになると目星をつけた年上の男の子たちを誘うようになった。
夜中に彼らに教えたりもしたけれど、それにもすぐに満足できなくなってしまうと、今度は男性職員を誘うようになった。
彼らは恐る恐るだったけれどわたしを抱いてくれた。
屈強に拒んでいた職員は色仕掛けで無理矢理落とした。
男なんてみんな同じだ。
どんなに高邁な職業を選んでいたって結局したがる事はなにも変わらない。
中年のベテランだっていたし、若い男性職員もいた。
初めは恐る恐るだった彼らも、わたしとのセックスに慣れてくると、それほど罪悪感も持たなくなり、そこそこ乱暴なセックスもしてくれるようになった。
けれど、わたしはそれでも満足できなかった。
いつも頭の片隅にあったのは父の姿。
彼の逞しいものを思い出すだけで、わたしは濡れた。
他の男に抱かれながらも、頭の中ではいつも父に犯される自分を思い描いていた。
わたしを完膚なきまでに陵辱し、支配してくれたひと。
畏れと郷愁に苛まれたあの時期を、ひとはなんと呼ぶのかわからない。
決して帰りたいと願っていたわけじゃなかったけれど、でも、父に抱いてもらいたいと願う気持ちは日に日に強くなっていき、わたしを父の幻影から逃さなかった。
あのひとには、いずれわたしがそうなるのがわかっていたのだ。
禁断症状が現れるように、わたしが父を欲しがりだすのがわかっていた。
だから、静観することができた。
そして、父は頃合いを見計らい、いよいよ仕掛けてきた。
わたしは為す術もなく、それから間もなくしてコトリを残したまま園を脱走することになる。