遠き日々-17
重丸が妙な噂を耳にするようになったのは、シホとコトリをあすなろ園に預けてから、ふた月ほどが経った頃だった。
「不純異性交遊?」
「え、ええ……、職員の間で噂になっています。」
児相のオフィスで、いつものように事務仕事をしているときに同僚の職員からその話はもたらされた。
「シホちゃんが子供たちと?」
重丸の問いかけに、その職員は困ったような顔をしながら、バツが悪そうに答えた。
「それが、どうも子供たちばかりではないらしくて……」
歯切れの悪い彼を追求してみると、シホと関係が囁かれているのはどうにも子供たちばかりではないらしく、園の職員も複数関係しているようだという。
「それが事実ならとんでもないことだぞ!」
重丸は、にわかに気色ばった。
子供を擁護するべき立場にあるものが、彼らを食い物にしている。
断じて見過ごせる話しではない。
「まだ、事実関係ははっきりしていませんが、取り敢えず主任には報告しておきます。」
部屋を出て行く部下の背中を苦々しい思いで眺めながら、重丸は早急にあすなろ園に足を運ぶ必要があると考えた。
だが、やはりここでも重丸は後手を踏むのだった。