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可愛い弟子
【ロリ 官能小説】

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遠き日々-10




お腹が大きくなっても、誰もわたしをいたわってなんてくれなかった。
それを理由にお客を拒むことも許してはもらえなかった。
迫りだしたお腹を面白がり、客は減るどころか、かえってわたしを指名する男たちは増えていった。
中には、わたしを責めながら、お腹の赤ちゃんを突き殺してやると脅す客さえいた。
無事に産めるなんて思ってなかった。
あのひとがいてくれなかったら、コトリはこの世に誕生していなかったかもしれない。
彼女だけが味方だった。

『シホよ……』

とても綺麗な人だった。
ちょうどお腹が膨らみ始めた頃、わたしを救ってくれるかのようにThrushに現れた女神。

『よろしくね』

やって来たその日から、とても素敵な顔で彼女は笑った。
あんなに素敵な笑顔ができるひとを、わたしはあそこで初めて見た。

『大丈夫。ちゃんと産めるわよ』

まだ二十歳ぐらいのひとだったけれど、彼女には、わたしとたいして歳の違わない大きな子供がいた。
産んだのは、わたしと同い年くらいの頃だったと彼女はいった。

『よく覚えていないの……』

まだずっと小さかった頃、公園で遊んでいた彼女は、見知らぬ男に連れ去られた。
10年以上もの間、その男とふたりだけの暮らしを強要され、その間に彼女は女の子を産んでいた。
押し入れの中で苦しみながら、たったひとりきりで産んだのだという。

『わたしが教えてあげるわ。必要な物はね……』

わたしのお腹が大きくなっていくと、彼女はトリヤマたちにいって必要な物を揃えてくれた。
お腹の膨らみが限界に達して破水が始まったときも、おろおろとするだけのトリヤマたちを尻目に、息の継ぎ方を教えてくれたり、手を握りながら励ましてくれたり、ずっとそばにいてわたしを助けてくれたのはシホお姉ちゃんだった。
死ぬような思いでようやく産んだコトリを取り上げてくれたのも、また彼女だった。

『わたしと同じ誕生日ね』

産湯に浸けたコトリを丁寧に洗い、まだ生まれたばかりのあの子を腕に抱きながら、ぼんやりとしか目を開けられないわたしに彼女が教えてくれた。

『よく頑張ったわね……』

優しい瞳に見つめられ、愛しむように彼女に髪を撫でられながら、その時のわたしは、コトリが誕生したことよりも、彼女が傍にいてくれた喜びのほうが強かった。
すごく優しい瞳をしたお姉さんだった。
だからかもしれない。
レンズ越しだったけれど銀縁のメガネを掛けた男の瞳が彼女とよく似ていた。
ううん、似ているなんてものじゃなかった。
同じだった。
彼が誕生日からわたしの素性を探ろうとしていたのは気付いていた。
だからデタラメな日付を言おうとしたのに、口に出していたのはシホお姉ちゃんの誕生日だった。
彼の目が、あまりにも彼女と同じだったから、思わずいってしまったのかもしれない。


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