重丸の苦悩-1
第29話 〜〜「重丸の苦悩」〜〜
灯りも点けずに待っていた。
主のいない部屋の中だった。
互いの部屋を行き来するようになってから、タカは、鍵の隠し場所を変えた。
電気メーターの裏側。
シホの部屋と同じ場所。
シホは、すっかりパジャマも脱いで、スリップドレスー枚の姿になっていた。
買ってきたばかりの新しい下着を、早くタカに見せてあげたくて、コトリが、ベッドの中で寝入ってしまうと、すぐにこの部屋を訪れた。
でも、用事が終わったらまっすぐに帰ってくると言ったはずなのに、タカはまだ帰っていなかった。
不安になって、電話をしてみようかとも思ったけれど、やめた。
シホの目の前で、存在を訴えるかのように明滅していた、緑色の小さなデジタル文字。
きっと時間合わせをしていないのだろう。
シホは、ソファの上から静かに立ち上がると、テレビに近づいて電源を入れた。
そして「00:00」の文字が瞬くだけのDVDプレーヤーのリモコンを手に取った。
確かあれは、白地に無地のレーベルだった。
あの病院で、コトリのベッドサイドに、忘れたように置かれていたDVDディスク。
テレビに明るさが蘇ると、眩しい光が白い身体を照らし、その光を頼りに、シホは、テレビ台の中を探っていった。
プレーヤーの横には、何枚かのディスクが乱雑に並べられていて、まさかと思ったけれど、似たようなディスクを見つけて、試しにプレーヤーにセットしてみたら、それは、いきなり始まった。
おそらくタカが途中まで見ていたのだろう。
見つめる画面の中で、4人の男女が絡み合っていた。
胸に縄を掛けられた女が床の上に横たわっていた。
その身体を跨ぐように、線の細い女の子が四つん這いになっている。
ふたりは身体の上下を入れ替えて、下になった縛られた女は、しきりに女の子の股間を舐めていた。
女の子の前後を、ふたりの男が挟んで、ひとりは、小さなお尻を握りしめながら壊さんばかりに腰を叩きつけ、もうひとりは、苦悶に喘ぐ女の子の口の中に、裂けそうなほど巨大な肉塊を押し込んでいた。
嘔吐くほどに深く押し込まれて、少女は何度も、耐えきれないかのように口から外し、胃液にも似た液体を大量に吐き出した。
息も整わぬうちに、また髪を掴まれて押し込まれ、喉の奥まで突き刺されて、白目になりかけたところで、また抜かれる。
陰惨さを極めた、ぞっとするほど恐ろしい光景だったが、足が震えたりはしなかった。
「ミノリ……。」
かつて自分も同じ事をされたことがある。
シホは、苦しげに胃液を吐き続けるミノリを、冷たい眼差しで眺めながら、
天罰よ……と、腹の中で笑った。