ヨーダとシノ-1
第27話 〜〜「ヨーダとシノ」〜〜
蛍光灯の青白い光が、やけにもの悲しかった。
白い壁に囲まれた寂しげな部屋。
薄い布団にくるまれて、小さな身体が目の間に横たわっている。
ずっと見慣れていた顔なのに、今は、なぜかその笑顔を思い出すこともできない。
ヨーダみたいな顔だったもんな……。
不思議と甘い物がきれたことのない課の茶器棚。
誰かが、どこかに出張に行くと、必ず土産を買ってきた。
箱の包み紙を解くと、決まって中身は甘い物。
「はい、おすそ分け。」
全然存在感のない人だったけど、みんなに好かれているのは知っていた。
課長……オレ、甘い物得意じゃないんですが……。
他の課の連中までが、困った事が起きると、決まってこの人のところに足を運んだ。
「甘いものはね……心を落ち着かせてくれるんだよ。」
窓際のデスクで、気持ちよさそうに毎日、日向ぼっこ。
甘い物を頬ばりながら、昆布茶をすする姿は、課の代名詞にもなってたっけ。
課長……これ以上落ち着いたらオレ、寝てしまいます……。
シゲさんの配慮で、オレが新しく配置されたのは、総務の文書係。
市が発簡した文書を、整理し記録する人。
単純な仕事だと思っていた。
「ここにはね、市の歴史が眠ってるんだよ……。」
まさしく市の全てが、掌握出来る部屋だった。
「勉強してこい。」
配置換えになったオレに、シゲさんが最初に言った言葉。
オレは、その言葉の意味を深く考えもしなかった。
目の前に横たわっているのは、市の生き字引。
優しく語りかけてくれたあの瞳は、もう開いてはくれない……。
まだまだ教えてもらうべきことは、山ほどあった……。
なのに、なぜ?
「野呂課長ぉ――――!!!」