ヨーダとシノ-7
「その秘密って、阿宗会が絡んでるんじゃない?」
それは口から出任せだった。
確証があったわけじゃない。
だが、コトリ……いや、シホか。シホを門の前で抱いていたあの男たちは、どう見たってまとも堅気の奴らじゃない。
あれが阿宗会の連中だとすれば、パズルのピースが埋まる。
それは、オレが想像する最悪の形でだが……。
「お前、どうして阿宗会まで知っている?」
想像でしかなかったオレの疑念を、シゲさんが払拭してくれる形になった。
「やっぱり、阿宗会が絡んでるんだね。」
観念したのか、シゲさんが、短いため息を吐きながら、表情を和らげていく。
「お前のことをちょっと見くびりすぎていた。この短期間に、よくそこまで掴んだもんだ。」
シゲさんは自嘲気味に笑っていた。
「シホたちが拉致される危険性って……阿宗会なの?」
シゲさんとは反対に、緊張していくのが自分でもわかった。
相手がヤクザなら、気を引き締めておかないと、取り返しのつかないことになる。
「ああ、そうだ。」
「なぜ、シホたちは阿宗会に追われているの?」
当たり前の疑問だ。
ヤクザに追われているなんて、ただごとじゃない。
いったい、あいつらになにがあったのか。
だが、ひとつわかったことがある。
シゲさんは、シホたちが追われているの知っていた。
だから、オレに監視を頼んだ。
いや、ボディガード代わりにしたんだ。
敵が凶悪で、かつ、戦闘力があるから、それに対抗するための処置をした。
そう考えれば、辻褄が合う。
シホたちが逃げている理由は、おそらく……。
シゲさんが大きく天井を仰ぎ見た。
大きなため息を吐いて、ゆっくりとオレに顔を向ける。
不思議なほどに穏やかな表情だった。
涼しげな瞳が、オレを見つめていた。
それは、覚悟を決めたと言うよりも、オレを信じていると言いたげだった。
「タカ、すべてを話してやろう。だがな、お前はきっと悩むことになる。そして、大きな選択を迫られる……。それでも、いいか?」
オレは大きく頷いた。
選択問題は昔から得意さ。
だって、鉛筆転がすだけだもん。
「シゲさん。シホのこと。コトリのこと。すべてを話して……。」
どんな答えが出ようとも、オレがあいつ等に向ける想いは変わらない。
必ず守ると誓った。
だから、早く話して!
「わかった。お前に俺たちの秘密を、すべて話してやろう。」
そう言って、シゲさんが真摯な眼差しで、オレを見据えたときだった。
いきなり病室の扉が開く音。
初老の看護師が、ずけずけと入ってきた。
「すいませーん。もう消灯時間なんでー、ご家族以外の方は、お引き取りくださーい。」
それだけ言ったら出て行った。
か、風か?
シゲさんが笑う。
「場所を変えるか……。」
シゲさんも苦笑いを浮かべながら、課長に一礼すると、病室を出て行った。
緊張感出しまくりで、妙な炎まで燃やしていたオレ。
いきなり水をかけられて、急にしぼんだ。
バ、ババァ……。