投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

可愛い弟子
【ロリ 官能小説】

可愛い弟子の最初へ 可愛い弟子 184 可愛い弟子 186 可愛い弟子の最後へ

ヨーダとシノ-6



――シホの勤める病院内――


「シゲさん、青森にいたんだね。」

広い背中が目の前にある。

狭い病室の中は、水を打ったような静けさに満ちていた。

「ああ……。」

シゲさんは、ズボンのポケットに手を入れながら、野呂課長の横に佇んで、ずっと寝顔を見おろしている。

「シホは、昔、熊本に住んでたって、言ってたよ。」

視線は課長に向けられているが、シゲさんの意識は違うところにある。

おそらく、そうだ……。

「そうか……。俺の生まれ故郷だな……。」

珍しく、その表情に精彩はなかった。

顔を俯かせる姿は、なぜか叱られる子供のようだった。

「4年前までね。」

「…………。」

「4年前。シゲさんがこの街にやってきた年と同じだね。これは、何か偶然なわけ?」

「ふっ……偶然だろう。そんな奴らはごまんといるよ。」

まだシゲさんの視線は、野呂課長に向けられたままだ。

「偶然じゃないよね。」

はっきりと断言した。

「なぜ、そう思う?」

「シゲさん、この門、知ってる?」

オレは、シノちゃんからもらった箱を片手に掲げた。

「門?」

ようやくシゲさんの顔が振り返る。

肩越しに銀縁メガネの奥から、光る目がオレを見据えた。

「朱院門のことか?ああ、観光地で有名だったからな。よく知ってるよ。それが、どうかしたのか?」

「この門の前でコトリを写した写真が、シホの部屋にあった。」

すなわち、それはシホたちが青森にいたって証拠だ。

「コトリちゃんの写真が?……そこで写した写真がか!?」

急にシゲさんの顔色が変わった。

「それは、本当にコトリちゃんだったのか!?」

いきなりシゲさんが、オレを睨みながら近づいてきた。

おわっ!ちょっとタンマっ!

「それは、本当にコトリちゃんだったのか!?」

両腕を掴まれて揺さぶられた。

ちょ、ちょっと待って!訊いてんのはオレなんだけど?

「あ、ああ……確かにコトリだったよ……。でも、今より幼い頃の写真だったけど……それに、門の印象も印象もちょっと違ってる気がする……。」

「印象が違う?違うって、どういうことだ!!?」

すごい気迫だ。

まるでオレを敵のように睨みつけている。

シ、シゲさん、ここ病室……。

「そ、その……なんか、色が違うような……。」

「色?、色って、門の色か?」

「う、うん……写真のは、こんなに真っ赤じゃなくて、もっと黒っぽかったような……。」

シゲさんが思案顔になった。

「そうか……。」

急にオレの腕を掴んでいた手のひらから、力が抜けていく。

「それは、コトリちゃんが、幾つぐらいの時の写真だ?」

「た、たぶん……4,5歳くらいかな……。」

オレの答えを聞いて、安堵したように緊張していた表情をほぐしていくのが、はっきりとわかった。

あんなに血相を変えたほどだ。よほど大きな不安が胸をよぎったんだろう。

そして、緊張が解けた途端に、シゲさんは、らしからぬミスを犯してくれた。

「そうか……。朱院門は一度焼けたことがあって、色を塗り替えているんだ。黒かったってことは焼ける前に撮られたものだから、それはコトリじゃなくてシ……!!」

そこまで言いかけたところで、慌てて口を閉ざした。

再び、鋭い目がオレに向けられる。

そんな目で睨んでも、もう駄目だよ。

今、シホって言おうとしたよね。

あれはコトリじゃなくて、シホなんだね。

しかし、どこまで顔が似てやがるんだ、あの母子は!?

だが、あれがシホだとすれば……。

「シホは、子供の頃、青森に住んでいたんだね?」

今も、キョウコが狂っているかもしれない地。

コトリは、東北で撮られたビデオの女の子を知っていると言った。

カマを掛けてみた。

シゲさんは、答えない。

「シゲさんは、青森からシホと一緒に、この街にやってきた。そうでしょ?」

やはり、オレの問いに、シゲさんは答えてくれなかった。

「シホには、何か秘密がある。それをシゲさんは知っている。」

シゲさんは、黙ってオレを見つめたままだ。


可愛い弟子の最初へ 可愛い弟子 184 可愛い弟子 186 可愛い弟子の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前