ヨーダとシノ-5
――東北自動車道下りエリア――
赤いテールランプが、暗闇の中をゆっくりと流れていく。
暗闇に慣れきった瞳は、気付かぬうちに視界を狭め、まぶたが徐々に重くなっていくのを感じていた。
道の端に緑の看板が見え、それを通り過ぎた辺りで、ようやく前方の車両がオレンジ色のランプを明滅させる。
やっと、2回目の休憩をするつもりになったらしい。
青森を出てから既に6時間と少し。
目的地までは、もう、それほどの距離はないが、このまま走り続けたところで、窮屈な座席に固定されていた身体が、まともに動いてくれるとは思えない。
ここらで身体をほぐしておかないと、どうにも機敏な動きなどできそうになく、箕田は、なかば安堵しながら、自分もウインカーを出すと、車体を左側のランプへと滑り込ませていった。
前方のベンツをぴたりと追うように、サービスエリアの駐車場に車体を乗り入れていく。
ベンツは、巧みに監視カメラの目から外れながら、車体を端へ端へと寄せていた。
駐車場の灯りがほとんど届かない暗がりまでやってきて、ようやくベンツが停まる。
それに倣って、ハマーをベンツの後ろに付けると、箕田は後部座席のふたりに振り返った。
「休憩でっせ……。」
声を掛けたところで、タンとハツのふたりは、箕田に見向きもしない。
既にタンは、上半身まで裸になって、およそ全裸に近い姿で、手のひらに握った小さな尻を一心不乱に舐めている。
ハツは、上着こそ羽織っているものの、ズボンの前はだらしなく開かれ、その巨体を傲然と背もたれに寄り掛からせながら、気持ちよさげに顔を上向かせていた。
ハツの開いた股の間に顔を埋めていた、小さな女の子。
なかなか可愛らしい顔をしていたが、今は見るも無惨に、涙と鼻水でグシャグシャになり、その小さな口には、裂けそうになるほどの巨大な肉塊が押し込まれている。
身に付けていたのは、赤いスカートと白いソックスだけで、そのスカートも尻が丸見えになるほどめくられ、ほとんど役目を果たしてない。
おそらく家族との行楽帰りだったのだろう。
1回目の休憩でSAに立ち寄ったとき、いきなりタンが拐かしてきた。
「どうせ長旅になるんだ。暇つぶしは必要だろ?」
まったく罪の意識など感じていないこの男は、下卑た笑みまで浮かべて、少女をハマーの中に放り込んだ。
当て身でも食らったのか、少女の意識はなく、ハマーがSAを出るまでは、その身柄も安泰だった。
くれぐれも揉め事を起こすな、とトリヤマからしつこいほどに言い含められていただけに、タンもハツも高速に乗り出すまでは大人しくもしていたが、いったんハマーが走り出してしまえば、もう、ふたりを掣肘する者は誰もいない。
ハマーの速度が、順調に高速域に達したところで、すぐさまふたりは、意識のない少女に襲いかかった。
眠ってたんじゃつまらねえ、とばかりに、タンは、少女のパンツを下ろして、丸い小さな尻をあらわにすると、節くれだったごつい指を、まだ小さなアナルに無造作に突き入れた。
悶絶しながら目覚めた少女は、わけもわからぬままに、瞬く間に着ていた服を剥かれて、たちどころに身体中に舌を這わされた。
泣き叫びながら、抵抗したところで、屈強な男ふたりに脇を挟まれて、襲いかかられたのでは、ひとたまりもない。
ハツは、あらがう少女の細い首を、でかい手のひらに握って「騒ぐと殺すぞ……。」と、大の大人でさえ震えあがるほどの凄味で脅かした。
悲鳴を必死に堪えて、無惨に唇を震わせることしかできなくなった少女は、かれこれ4時間近くも、ふたりのオモチャにされて弄ばれつづけている。
もはや、意識は虚ろで、目はぼんやりと開いているだけだった。
言われるままに、代わる代わるふたりのモノをその小さな口に含んでいき、アナルは、指が2本も入るほどに拡げられている。
「降りねえんですかい?……。」
あまりの悪どさに、ため息しか出てこない。
訊ねてみたところで、ふたりは、少女に夢中で箕田の声すらも耳に届いてないようだった。
箕田は、あきれたようにもう一度溜め息をつき、ハマーを降りた。
「タンとハツは、どうした?」
先にベンツから降りていたトリヤマが、すぐに声を掛けてくる。
「ぐっすり、寝てますわ……。」
そうとしか答えようがなかった。
「けっ!バカ共が……しっかり働かねえとヤキ入れるからな。あいつ等にそう伝えておけ……。」
忌々しげに毒づくと、トリヤマは、先にサービスエリアに足を向けていた和磨の後を追いかけていった。
ハマーの中に顔を突っ込まれずに助かった。
真っ黒なスモークが張られたウインドウは、外から見ただけでは、中の様子はわからない
ここで、いざこざでも起こされたのでは、計画が狂いかねない。
しばらくは、大人しくしててくれよ……。
あの少女には憐れみを覚えるものの、大事の前の小事には、目をつむることもやむを得なかった。
箕田には、これからやらなくてはならないことがある。
ズボンのポケットに手を突っ込むと、箕田は、手のひらに小銭を確かめた。
SAには、緊急用に公衆電話が置いてある。
ケータイは使えない。
履歴からバレる危険があるからだ。
電話番号は頭に叩き込んであった。
相手の名前も知っている。
箕田はトイレに向かう振りをしながら、公衆電話を見つけると、その前に佇んだ。
周りを見渡して、和磨とトリヤマの姿がないのを確認してから、受話器を把って小銭を入れた。
覚えていた番号を脳裏に浮かべ、その番号を押していく。
短い呼び出し音の後、すぐに女の声が返ってきた。
「はい。青森県警青森署、生活安全課です。……」