引き籠もりの友-7
時計を見たら8時過ぎ。
レンの馬鹿ヤローのおかげで、てんやわんや。
おかげで、キョウコを探す旅も、本日は強制終了。
まったく、面倒掛けてくれる。
でも、なぜか心は、ほんわか晴れ晴れ。
メグミちゃんに、ほんの少しだけど笑顔が戻った。
それだけで十分。
でも、近親相姦って、正直根が深いよな。
きっとオレには、想像も出来ないような世界に違いない。
9歳からか……。
コトリと、同じ歳だ。
あんな小さな頃から、彼女は、絶望の中で足掻いて生きてきた。
レンが救世主になるとは、驚きだけどね。
そのレンの入院手続きを終えて、病室に向かっているところだった。
奴が入ったのは、一泊ン万円の特別個室。
思いっきり高い部屋選んでやった。
金あるんだからいいよな。
4階にある入院病棟に入ると、まだ廊下の灯りは落とされてないが、歩く人の数はまばらで、ずいぶんと落ち着いた雰囲気。
今日は週末。
慌ただしく動き回る看護師の姿も、見あたらない。
奴の部屋は、一番奥にあった。
角際の、一番見晴らしのいい部屋。
メグミちゃんは、先に行ってレンを見舞ってるはずだった。
奴の部屋の前に立ち、ノックしようとしたところで、中から聞こえてきた怪しい声。
「……いちゃん。はぁ……おニイちゃん……。」
「メグミは、お兄ちゃんのだからね……絶対に、誰にもあげないからね……。」
特別個室のベッドは、ダブルサイズ。
ふたりが寝ても十分に余る広さ。
どうやらメグミちゃんは、さっそく、タダでヤらせてあげたらしい。
ハハ……お幸せに……。
レン、血が足りねえんだから、変なところに血ぃ溜めて、今度は、貧血で倒れんなよ。
ってか、オレがいるのになぜ始める?
いい加減にしろよお前ら……。
間違いなく血の繋がった、仲のいい兄妹。
野暮も躊躇われて、そのまま背を向けた。
シホたちと分かれてから、すでに3時間ちょい。
もう、そろそろアイツらもアパートに帰るはず。
シゲさんに会うべきか迷っていた。
ケータイは繋がらなかった。
今日は、役所も休み。
自宅に、押しかけてみようかとも考えた。
でも、空振りだったらどうしよう?
そんなことを、あれこれ迷っているときだった。
「タカ!」
不意に、呼び止められて振り向くと、なんと!そこに!
シゲさんが立っていた……。