引き籠もりの友-3
「昨日も、来ませんでしたか?」
「はぁ……。」
シホの勤める病院の中。
夕べと同じ先生。
あんた、ここに住んでんのか?
「昨日は、引きつけで、今日は、自○未遂ですか?お忙しくて大変ですねぇ。」
まあ、イヤミ。
でも、昨日は別にしても、今日は自○未遂だからなぁ。
命を守る医者としては、イヤミのひとつも言いたくなるわな……。
けたたましい救急車のサイレンの音を聞きつけて、慌てて駆けてきたのは、昨日お世話になった管理人さん。
「また倒れたのかい!?」
倒れました……。
「あれ!?この人は15階の!」
ストレッチャーに乗せられた人物を見て、管理人さん、驚きの顔。
そうです。ここの住人です……。
「一体、何があったの!!?」
へへっ……実はですね。
一瞬にして、レンの手首から血飛沫が上がった!……なんてことはなくて、血がピュッと飛び出しただけ。
「バ、バカッ!!」
慌てて止めに入ったけど……ん?なんか少なくね?
血が噴いたのは、ほんの一瞬のこと。
すぐに出血がやわらいで、ボタボタと滴り落ちるだけになった。
血は出てるが、噴き出してはいない。
レンの根性なしが幸いした。
どうやら、表面近くの静脈を切っただけで、動脈には達してなかったらしい。
人間は、静脈を切っただけでは、簡単に死なない。
手首を切るなら、さらに深い位置にある動脈まで切断しなければ、出血多量で命を落とすことは、まずない。
動脈は、腕の中でも、かなり深い位置にある。
そして、その手前には、手首を動かすための腱や神経まであるから、相当痛い思いをしなければ自分で命を断つことは出来ない。
「キャーーーー!!イタいっーーーー!!」
コイツに、そんな根性あるわけない……。
レンは、包丁を放り投げて、切った自分の手首を押さえながら大騒ぎ。
「ほれ、手を上げておけ。」
切った方の腕を上げさせて、肩の付け根近くの二の腕を、ギュッと搾るように押さえてやる。
圧迫止血法。
何か縛るものは?と探していたら、手首から滴り落ちた血が、レンの顔にポタポタ。
レン、HPマイナス10000ポイント。
いきなり、白目向いて、倒れやがった。
また白目かよ!
ごすっ!
床に頭を強打して、結構な音。
ヤツは白目向いたまま、倒れっぱなし。
で、仕方なく救急車を呼んだわけ。
なんで2日連続で、救急車に乗らにゃならん!!