嵐の始まり-1
第23話 〜〜「嵐の始まり」〜〜
目の前に並ぶ、ふたつのあどけない顔。
頭の高さが違うだけで、ほとんど変わらない面立ちのふたり。
「それ、ちょうだい。」
「これ、美味しそうね。少し、ちょうだい。」
歳の差は、二十歳。
二十歳も違えば、まったく違うジェネレーション。
「これ、美味しくないよ。」
「そう?……ええっ?!すごく美味しいじゃない!」
たぶんコトリの勝ち。
シホの味覚は、当てにならん……。
ファミレスの中。
夕暮れ時の店内は、週末ということもあって、家族連れでにぎわっている。
「えーと……コレとこれと、これとコレかな?」
クルマの中では、あまり元気のなかったコトリも、カラフルなメニューを開いた途端、たちまち目の色を変える。
おまえ、どれだけ食べるの?
「えー!?そんなに食べて大丈夫なの?じゃあ、私は、これとコレと、コレとこれね。」
あんたも、人のこと言えないから。
お祝いの夕食のはずが、ふたりが頼むのは甘いものばかり。
コトリ、フランクフルト食べるんじゃなかったっけ?
もう、下の口で食べたからいいか。
次から次へと、テーブルの上に並べられていったスィーツの皿。
み、見てるだけで、胸が……。
日頃は小食な二人だが、甘い物だけは別腹なんですと。
どんな腹なのか、いっぺん見せてみ。
見た目は、間違いなく親子のふたり。
しかし、仲良くはしゃぐ姿は、親子というよりも、まるで歳の離れた姉妹のよう。
コトリを見つめるシホの瞳には慈愛の光。
そんなシホを、憧憬のまなざしで見つめるコトリ。
仲睦まじい二人の微笑ましい光景。
しかし……。