見えない正体-7
「トリ……車を出せ……」
「へい。」
ベンツAMGの重厚なノイズが駐車場に響き渡る。
真っ黒な車体が、滑るように静かに動き出した。
あとは、ツグミがうまくやってくれる。
それにアイツもいることだから、心配する必要もねえだろう……。
まったく皮肉な話しだ。
アイツと、こんな形で会うことになろうとはな……。
だが、これも運命だな。
今頃、ツグミに説教でもしてんのか?
ツグミから聞いたよ。
俺から逃げるように、吹き込んでるらしいじゃねえか。
だが、無駄なことだ。
ツグミは、俺から離れねえ。
離れられねえ身体にしてやった。
オメエは女がわかっちゃいねえよ。
あいつ等は、男を破滅させるためだけに生まれてくる。
だから、容赦なんかする必要はねえ。
徹底的に痛めつけて、君臨してやれば、それでいいんだ。
愛だの恋だの、そんな戯言を信じてるうちは、オメエにツグミは動かせねえよ。
もっと女を勉強しろ。
なあ、重丸……。