『始まり』-2
横顔を見る
長い睫毛
あの瞳は何なのだろう・・・
どうしてこんなにも引きつけられるのか・・・
シュウがこっちを振り返った。
私は目を逸らしてココアを啜る。
「アヤさんは、俺のこと好きなの?」
ぶっっ
ココアを噴き出してしまう。
「なっ・・・な?」
慌てる私の口元をタオルで拭いてくれながら、シュウは続ける。
「一年の間で、二年にものすごくかわいい人がいるって噂で・・・みんなアヤさんのコト知ってるんだよ?」
―ん・・・?
「その噂の人って・・・私のこと?」
「そうだよ」
―信じられない。噂ももちろんだけど、シュウが私のことを知ってたなんて・・・
ちょっと嬉しいかも。
「・・・で、アヤさんは 俺のこと好きなの?」
楽しげな表情で、私を覗き込む。
その瞳に吸い込まれそうで・・・
「どうして・・・そんなコト・・・」
私の声が不自然にうわずっているのがわかる。
「だって、いつも俺のこと見てる」
―シュウが近づいてくる。
「その目がいつも俺を引きつける」
―シュウの瞳に私が映ってるのが見える。
「その目がいつも俺を誘惑してる」
・・・二人の距離がゼロになる。
唇から、シュウの熱が伝わってきた。
「アヤ・・・寝たの?」
シュウが指の間に私の髪を泳がす。
「・・・起きてるよ」
シュウの方を向くと、あの日みたいにシュウが近づいてきた。
瞳に私を映して。
長い長いキスの後、私はシュウの耳元で囁いた。
「初めて廊下ですれ違った時から、シュウの事好きになったの」
シュウは目を細めて、私の耳元で囁いた。
「俺もだよ。アヤの目に引き込まれて、逃げられなかった」
私たちは同じだった。
私たちは、あの日、あの瞬間から始まっていたんだ。