コトリの覚悟-5
病室でぼんやりと天井を見上げていた。
「もう大丈夫そうですね。これなら、昼にでも退院して、かまわないでしょう」
朝の巡回時間。
昨日と同じ先生。
「ありがとうございました。じゃあ、すぐに手続きしてきます」
と言うわけで、シホは、退院の手続きに。
「ごめんなさい。ちょっと、仕事のことで呼ばれちゃって。昼までには、終われると思うから」
帰ってきたら、すぐに、また出て行った。
今日は金曜日。
週末決算の日。
コトリはお腹が膨らんだら、また眠くなったらしい。
可愛い寝顔で、すややかな寝息を立てていた。
オレは、個室に運び込んでもらった、もうひとつのベッドに横になっていた。
夕べは、シホがこのベッドに、オレは廊下のイスで寝るはずだった。
「さびしいでしょ?」
屋上から戻り、消灯の時間になって、廊下に出て行こうとしたところで、シホが呼び止めた。
「おいで……」
まるで子供扱い。
わん♪
嬉しそうに潜りこんだオレもオレだが……。
目を閉じようとしたところで、はたと思い出した。
ディスクとファイル!!
慌てて、ベッドから飛び起き、部屋の中を探した。
どこまで、持ってたんだ?……。
救急車の中では確かに持っていた。
だが、そこからの記憶が曖昧でしかない。
ベッドの下にまで潜りこんで探しまくった。
「これ?」
シホが右手に掲げていたのは、まさしくオレが探していた目的のブツ。
慌てて取り上げようとしたら、背中の後ろに隠された。
「どうして、こんな事調べてるの?」
中身、見たのかよ。
「別にちょっと……」
DVDの中身までは、わからないはず。
「ちょっと、何?」
「シホには、関係ないことだよ」
「コトリが倒れたのと、なにか関係があるんじゃないの?」
えっ?
「なぜ?」
「そう思うから」
お前、テレパスか!?
「このDVDには、何が映ってるの?」
「だから、シホには関係な……」
「言えないの!?」
すごい目だった。
まるで、何かに追い詰められたような、すごい目で、シホはオレを睨んでいた。
「シホ……」
「言わないなら、返さない」
有無を言わせない迫力があった。