コトリの覚悟-2
「おかわりっ!!!」
おかわりって、お前……
あるか!んなもん!!
病院食をなんだと思ってやがる……。
つぶらな瞳が、静かに開かれた。
「ここ……どこ?……」
ぼんやりと、向けられた眼差し。
「コトリ……。」
シホの泣きそうだった声。
「大丈夫か?」
オレの問いにコトリは答えなかった。
「お腹が……空いた……。」
力ない声で、それだけを言った。
コトリのたくましさに、込みあげた嬉しさ。
シホとふたりで、コトリを抱きしめていた。
「何があったの?……。」
コトリが不思議そうな顔で訊ねる。
オレ達も多くは、語らなかった。
何かが、コトリの心にブレーキをかけている。
まるで、昨日のことを覚えていないコトリを見ていたら、ふと、そんな気になった……。
昨日のことが嘘のようにコトリは元気。
豪快な食欲。
「すごい料理だな。」
コトリが夢中でパクついてるのは、病院食とは思えない豪華なメニュー。
「ここは、私立だから、料理もとてもいいのよ。」
シホが得意そうに教えてくれた。
確かに病院食だなんて、思えない。
湯気の立った温かいご飯に、揚げと豆腐の入った味噌汁。
焼きのりと漬け物にシラスを和えた大根おろし。
なぜか、メインはローストビーフ。
副食にオムレツとマリネらしきサラダまでが添えてある。
和洋折衷か?
ってよりも、節操がないだけって気もするが……。
デザートに、コンデンスミルクのかけられた、いかにも新鮮で美味しそうなイチゴがとても目を惹いた。
カウントダウンなし。
Go!!!
コトリの食欲といったら、そりゃすごかったこと……。
「おいしいっ!!」
お前、昨日ぶっ倒れたよね……。
嘘のような食べっぷり。
箸を持つ手が止まらない。
「コトリ……美味しいか?」
「うんっ!!」
そんなにうまいの?
試しにオムレツを一口つまんで、食べてみた
「取っちゃダメっ!!」
わあったって!
少しぐらい、喰わせろ……。
ん?
げっ、すげぇ薄味だ……。
コトリは、脇目もふらずに一心不乱。
こんな病院食をありがたがるなんて……。
シホの手料理は、どんな料理も豪華メニューに変えてしまうスペシャルスパイス。
なんて、不憫なやつ……。
あっという間にペロリ。
メシ粒ひとつも残さずに完食。
すげっ!
「ごちそうさま♪」
はいはい……。