心の傷-1
第18話 〜〜「心の傷」〜〜
「あげる……。」
そこは、お姉ちゃんの場所だった。
まるで緑の絨毯を広げたようなクローバーが群がる草むらの中。
お姉ちゃんは、いつもひとりぼっちで、そこにしゃがみ込んでいた。
「はい……。」
丸くて小さな白い花でつくられた冠。
「シロツメグサよ……。」
そっと、頭に乗せてくれた。
ほっそりとした、白い指。
笑うと、右の口元にだけ覗く八重歯が、とても可愛らしかった。
その時、初めてお姉ちゃんが、すごく綺麗な人なんだってことに気がついた。
みんなは、お姉ちゃんを、お化けと呼んで怖がった。
背中まで伸びた長い髪。
誰にも見られたくないように、前髪をいつも下ろしていた。
不思議と、白いドレスばかりを着たがった。
そして、その格好で夜中に、突然フラフラと歩き出す。
急に、大きな声で叫んだりする。
だから、みんなは怖がって、お姉ちゃんに近づかなかった。
お姉ちゃんも、誰とも話さなかった。
いつも、ひとりぼっちだった。
でも、わたしにだけは、なぜか優しかった……。
お姉ちゃんは、いつもわたしを、違う名前で呼んでいた。
あの名前は、確か……。