心の傷-3
偶然にも、コトリが運ばれたのは、シホの勤める病院だった。
シホは、ちょうど仕事を終えて、帰宅するところだったらしい。
コトリが、救急外来搬入口からストレッチャーに乗せられて、運び込まれるところに、裏口から職員駐車場に向かおうとしていたシホと、ばったりと出くわした。
シホは、ストレッチャーに乗っているのがコトリだと知って、顔色を失った。
「どうしたの!!?」
「わからない。急に倒れたんだ。」
そうとしか答えようがない。
何が原因で、倒れた?
思い当たることが……ないわけではなかった。
だが、それを今、シホに告げることは出来ない。
とにかく今は、コトリの無事を確かめることが先だ。
「コトリ!!コトリ!!!」
シホは、搬送されるコトリに向かって、必死に呼びかけていた。
顔面が蒼白になっていた。
今にも泣き出しそうな顔に、いつものあどけなさはなかった。
無理もない。
親ひとり、子ひとりだ。
姉妹のように仲の良いふたりだった。
今さらながらに、コトリを想うシホの気持ちに胸が痛む。
コトリは、救急搬送室に運び込まれた。
看護師に入り口で制止され、オレは倒れそうになるシホの身体を支えてやるしか、出来なかった。