過去のない女-3
「お尻で、して…………。」
逝きそうになっていたオレの耳元で、シホが囁いた。
上に跨っているシホの尻肉を掴みしめて、もう片方の手で頭を抱え込んでいた。
オレが逝くときのサイン。
しかし、シホは許さなかった。
不意に胸が離れて、シホはお尻を向けると、背中を弓なりにしならせた。
「お願い……お尻で、して…………」
豊かな双丘を自分の手で、割り開いていた。
お尻って、お前……。
「大丈夫だから……」
暗がりの中、はち切れんばかりの丸みの狭間が露骨に剥き出され、中でひっそりと息づく蕾が、待ちかまえているのがわかった。
引き寄せられるように、シホの尻を抱え込んでいた。
アナルは、シホの愛液にしとどに濡れていた。
押し込んでいくと、かすかな抵抗を見せただけで、それは、呆気ないほど簡単に呑み込まれていった。
膣とは、また違う気持ちよさ。
押し込んでいくときの何とも言えない抵抗感。
引き抜くときは、出て行くのを惜しむかのように締めつける。
慣れている……。
意図的にするのではなく、身体が勝手に反応する。
そんな感じだった。
シホは、両手で口をふさぎ、必至に声を殺していた。
それでも、沸き上がる歓喜の声を鎮めきることができず、獣の咆吼のような呻き声で喘いでいた。
眼下に見下ろす、華奢な肢体に、ひどく嗜虐的な昂奮を覚えてならなかった。
壊してしまいたい衝動に駆られて、夢中で叩きつけていた。
シホのアナルは、乾くことも知らず、最後まで卑猥にオレのを呑み込みつづけた。
初めてのAF。
頭の中が真っ白になって、シホの中にぶちまけた。
終わると、シホは、当たり前のようにオレのモノを口にした。
汚れを拭い取るように、丹念に舌で舐め清め、最後は、濡れたティッシュで後始末までしてくれた。
惚けたように天井を見上げていたオレに、無邪気な笑顔を見せると、尻の穴からわずかに噴きこぼれていた精液を自分の指ですくい取り、それをオレの頬にそっと、なすりつけた。
シホは、オレを見下ろしながら笑っていた。
ゾッとするほど凄艶で、あどけない笑みだった……。
シゲさんは、「知らないはずだ。」と、言っていた。
しかしシホは、少なくとも、自分たちの身の回りに何らかの異常事態が起こりえる可能性に気づいている。
でなければ、夕べの不可解な行動が理解できない。
「すぐにわかったよ。」
あどけない顔で笑っていた。
「だって、正面にいるんだもの。」
確かに正面にはいた。
だが、家と家との狭い隙間は、外灯の影になり真っ暗な闇になって、オレの姿を隠していたはず。
ましてや奥に潜んでいたオレを、そうそう簡単に見つけられるはずはない。
にもかかわらず、シホは、まっすぐにオレの所にやってきた……。
見ていたから?……。
アパートには、道路側に向かって、どの部屋にもふたつの窓がある。
玄関を真ん中に挟んで、右には浴室の窓。左にはキッチンの窓。
どちらかの窓から、シホは、外の様子を覗っていた。
オレが隠れていた場所は、アパートを見張るには、絶好のピーピングポイント。
最初から目星さえつけてあれば、中に潜む者を見つけることは容易い。
ならば、シホが簡単にオレを見つけた理由もうなずける。
あんな夜中にまで神経を使うほどだ。
オレが思っている以上に、シホたちに迫る驚異の度は、大きいのかもしれない。
守ってくれ、と言っていた。
いったい相手は誰なんだ?
夕べは、寝不足のせいもあって、確かめる前に墜ちてしまった。
ぴったりと寄り添っていた柔らかい肌が、ひどく心地よくてならなかった。
シホは、ずっと甘えるように胸に頬ずりを繰り返していた。
愛しむように、何度も何度もオレの胸に唇を寄せていた……。