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可愛い弟子
【ロリ 官能小説】

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旅の始まり-14



「拉致!?」

息を呑んだ。

「そうだ。相手は聞くな。だが、あの親子に危険が差し迫っているのだけは確かだ。あのふたりを命がけで守れ。この役は、お前にしかできない……。」

「拉致って、いったい?」

「事情も聞くな。いずれ時が来たら話してやる。」

「しかし……」

「俺は、シホに約束したんだ。必ず守ってやるとな……。もう、あの子を悲しませたくはないんだ……。」

あの子……。

「シゲさん……。」

シゲさんは、タバコを薫らせる。

自戒するように、大きくため息を吐いて視線を下げた。

「本来なら、俺がやるべき事なんだがな……。もう、勝手気ままに動ける立場じゃない。面倒くさいもんだ。だが、お前がいてくれて助かった。うまい具合に、お前たちが、くっついてくれたおかげで、こっちも、だいぶ楽に動けるようになった……。」

「シゲさん、俺とシホのこと気づいてたの?」

シゲさんがニヤリと笑う。

「ああ、たまに探りを入れてたからな。お前がこのアパートに引っ越したのも、知っていた。度々お互いの部屋に出入りするようになったのもな……。」

たまに探りって……。

シホが、言ってた変質者って、アンタのことじゃねえのか?

「この前、シホに会って確信したよ。はっきりと口にはしなかったが、お前のことを訊ねたら、真っ赤になって俯いていた。バカでもわかる……。」

「じゃあ、この前、体育館で会ったって……。」

「まあ、それだけじゃないんだが、お前のことを確認したかったのも確かだ。」

「だったら、直接オレに訊いてくれれば……。」

なんもいらん心配しなくてすんだのに……。

「お前みたいにストレートの剛速球しか投げれんヤツに聞くわけにはいかんよ。これは、非常にデリケートな問題なんだ。」

はいはい、どうせバカですよ。

「とにかく、あのふたりを守れ。それには、お前のその拳が必要なんだ……。」

どんな事情があるのかは知らないが、シゲさんがこれほど言うからには、あのふたりに危険が迫っているのは間違いないんだろう。

「あのふたりは、自分たちが危険だって事は、知ってるの?」

「いいや、知らないはずだ。」

はず?

「たぶんな……」

シゲさんの瞳に一瞬だけ、暗い影が宿る。

「シゲさん……どうせ訊いても教えてくれないだろうから、オレも、もう深くは訊かないけれど、でも、小さな事でもいいから、多少なりとも教えてもらえると、こっちとしてもありがたいんだけど……。」

あのふたりが危険なのは、わかった。

だが、まったくの徒手空拳では、こちらも不安だ。

「わかった。教えられるだけのことは教えてやろう。まず、ふたりとも危険だが、特に危険なのは娘の方だ。」

コトリ!?

「な……!?。」

……ぜ、と訊ねそうになって、慌てて声を引っ込めた。

シゲさんがじろりと睨む。

すいません。続けてください……

「だが、場合によっては、母親の方、つまりシホの方が危険になる。」

????

シゲさん、禅問答じゃないんだから……。

「特にシホには注意しておけ。コトリちゃんの方が危険だが、監視に重点を置くならシホの方だ。」

「これは、なんかのクイズなわけ?全然意味がわからないんだけど……。」

「正直なところ、俺にもわからんのだ。」

困り切ったような顔をしながら、シゲさんが小さくため息をついた。

「実を言うとな、拉致されるかどうかもわからん。」

なんだそれ!?

「現段階では、可能性が高い、というだけで確証はない。すべてが憶測でしかないんだ。」

今度は、オレの方が身体を倒していた。

なんだよ、それ?

じゃあ、まったくなにもわからないって事じゃないか。

「しかし、ある時期から、その可能性が非常に高まったのは事実だ。そして、今は危険度がもっとも高いレベルにある。確証がないからと言って、何もしないわけにはいかない。そんな場合じゃないんだ。何か起こってからじゃ遅いんだよ。」

確かに。

「もし、奴らが動くとすれば、それは、ごく近い時期だろう。奴の性格からしても、それは、まず間違いない。」

ヤツ?シゲさんは、相手を知っている?

「タカ。」

「はい。」

真剣な眼差しが向けられる。
瞳の中に少しだけ不安の色があった。

「もし、仮にあのふたりが襲われたとしたら、襲撃者の中のひとりは、間違いなく手練れだ。油断するな。無理はしなくていい。自分だけでは勝てないと判断したら、迷わず俺に連絡しろ。何があっても必ず助けにいく……。」

シゲさんは、そういうと、もう話すことはないと言いたげに、タバコを空き缶に投げ入れた。

結局たいしたことは、わかんねえな……。

でも、シゲさんとふたりなら心強い。

シゲさんは、「春雷重丸」と警察官たちからも、畏怖されるほどの凄腕の剣士だ。

ゆったりとした構えから、一瞬にして相手を切り裂く高速の太刀筋が、穏やかな春の空に、突如、閃光を走らせる稲妻に似ていることから、そう呼ばれている。

それに剣道3倍段と言われるほど、有段者に武器を持たせたら、まず、かなう奴はいない。

シゲさんが立ち上がりながら、タバコをポケットへとしまっていく。

「タカ、この件が片付くまでお前は自由だ。2度目の休暇を楽しんでこい。その代わり、やることは、きちんとやっておけよ。」

へいへい。

「ああ、それとな……。」

玄関で靴を履いていたシゲさんが振り返る。

「俺は、監視しろ、とは言ったが、調べろ、とは言ってないからな。気持ちはわかるが、市民課であまり悪さすんなよ」

そう言って、ニヤリと笑うと、シゲさんは、玄関を出て行った。


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