旅の始まり-13
「タカ……。」
「はい……。」
「今から、お前に話しをする前に、確かめておきたいことがある。」
ひどく目つきが怖かった。
まるでオレを敵のように睨んでいる。
「確かめ……たいこと?」
「お前、シホをどう思ってる?」
いきなり来たよ。
シホ!
呼び捨てかよ……。
シゲさんの目には、返答次第では、っていう、なんだかわからない不気味な怖さがあった。
急に、思いがけないことを訊ねられて、言葉に窮した。
「どう、思ってる……て……」
「はっきり言おう。お前の返事次第では、今回お前に頼んだ話は、聞かなかったことにしてもらう。」
「どうして?……。」
「そんなことは、聞いてない。オレの質問に答えろ。」
有無を言わさない迫力があった。
「シホさんは……好きですよ……。」
「好きとは?」
「えっ?」
「お前の好きってのは、どのくらいを言ってるんだ?」
「どのくらいって……」
そんなのわかんねえよ。
言葉に詰まっていると、シゲさんが、しょうがねえヤツだって、言いたげに、身体を後ろに倒していった。
後ろに置いた両手で身体を支えながら、じっとオレを見つめている。
「なあ、タカ。これだけは言っておくぞ。シホとお前がどんな関係になったって俺はかまわん。だがな……これだけは覚えておけ。中途半端に好きになるなら、彼女には近づくな。それは、俺が許さん。」
「どうして?」
「お前が、心配だからだ。」
「心配?」
「ああ、そうだ。」
それ以上、声が出なかった。
気迫に飲まれていた。
シゲさんが、大きく息を吐いた。
すぐに表情を和らげていく。
「でもな、俺は、お前みたいなヤツこそ、彼女に相応しいとも思っている。お前みたいに、強くて、優しいヤツがな……。」
最後の方は、ひどく優しい眼差しだった。
その眼差しのままにシゲさんがオレを見つめる……。
「彼女を、ずっと好きでいつづける自信があるか?」
優しい声だった。
オレは、答えなかった。
ただ、シゲさんの瞳だけを、正面から見つめていた。
「何があっても、彼女の支えになりつづける自信があるか?」
シゲさんは、オレの答えを知っている。そんな感じだ。
「彼女を、命がけで守ってやれるか?」
覚悟を決めろと、瞳がオレに言っていた。
小さかったけれど、オレは、そこだけ、しっかりと頷いた。
「そっか……。」
シゲさんは、後ろに倒した身体を両手で支えながら、天井を仰ぎ見た。
しばらくの沈黙。
「じゃあ、命がけで守ってもらおうか……。」
え?
「いいか、タカ。」
身を乗り出してきた。
「ケガをされても困るから、もしものために、お前にだけは教えておく。」
ただならぬ、表情だった。
さっきまでとは打って変わって、ひどく真剣な顔だ。
鋭い眼差しがオレを見つめる。
シゲさんが口を開いた。
「あの親子は、この数週間内に拉致される可能性がある。」